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  よごれた地球

 


 
        鷲田 祐介 ・ 喜田川 卓史

 

 


「お父さん、タバコをやめてくださいな。」 
子どもたちやお母さんが注意をしています。
「うん、悪かったな。」 
お父さんは、いつもそう言いながら、つい、タバコに手がいってしまいます。
「一日にいったい何本吸っていますか。」
人がインタビューしています。
「えーそうですね、十本かな、二十本かな、いやー、気がつくと、タバコの箱の中が空 っぽになっているのですよ。やめたいとは思っているんだけどね。」 


 


お父さんは真っ赤になりながら、ブツブツ言っています。
地球の空気をよごさない研究をしている人は、町でタバコを吸っている人に、 たくさんインタビューをして帰ってきました。
「いやー、タバコを吸っている人は、自分の出しているけむりが空気をよごしていることに、気がついていないんだろうな。」
「そうだ、地球の空気が、どんなふうにかわっているのか、調べてみようよ。」


 

そこで宇宙ロケット「ネグロカバロ号」を発射することにしました。乗組員は、たかくんとゆうすけくんでした。

ネグロカバロ号は馬の形をしたロケットで、足にはローラースケートをはいています。ヨーイ・10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0
                                  発射 !!


ネグロカバロ号は、どんどん空に昇っていきます。

雲の中を横に行く時はローラースケートが役に立ちます。
どこもここも、かすんでいる中をどんどん行くと……


「うーん、やっぱり地球はけむりっぽいよ。」「ヤニで全体が黒っぽくなっているね。」
「特に日本はどす黒いみたい。」
「たかくん。」
ネグロカバロ号がいいました。

なんだい、ネグロカバロ。」
「地球の兄弟星の所に行って、このごろの地球の様子を聞いてこない?」
「うん、それもいいね、賛成。」



一番目に月くんに会いました。
「このごろの地球をどう思いますか。」
ネグロカバロが聞きました。

「えーと、お兄さん星のこと悪くいいたくないけど、このごろすごーく汚いよ。くさいけむりが時々ぼくのところまで、におう時があるんだ。」

月くんは少しおずおずと答えました。
 

 


水星や金星も、口ぐちに文句を言いました。 

太陽は
「宇宙を汚すやつは許さんぞ。」

と言って、ますます赤く燃え上りました。

びっくりして地球の方をふり返ると、地球はますますタバコをふかしています。

 


火星、木星と回って、ネグロカバロ号は土星にやって来ました。
土星のまわりの氷のつぶたちが、口ぐちに言いました。

「青い地球はどこに行ったの?」
「地球は黒い星になってしまったよ。」

とつぶやきました。


天王星、海王星、冥王星も
「地球は、自分のことしか考えないバカなやつだなー。」
と話し合っています。
帰りながらネグロカバロ号は悲しくなりました。何十億年も仲間だった星たちから、きらわれてしまった地球が、かわいそうになったからです。


今日はネグロカバロ号と二人の乗組員が地球全土にTVで話す日です。

「地球のみなさん、ぼくたちは太陽系を旅してきました。地球のことを聞くためです。今、地球は汚れています。宇宙からみる地球はヤニで黒くなっています。今こそ美しい地球を生き返らせましょう。」


TVを見ながら、タバコを吸っていたお父さんたちは、みんなタバコを消しました。

そういう良い人がたくさんふえて、地球はまた美しい星になることでしょう。

 

                            (おわり)

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