JR西日本の乗務員(車掌)が,休憩控え室の分煙を求め,提訴へ

pdfファイル訴状本文(pdf)JR西日本への本会要請文(2001.9 pdf)

1.JR西日本の乗務員(車掌)Aさんが,乗り継ぎ勤務駅の乗務員詰所(休憩控え室)の分煙を求め,2000年6月にJR西日本本社を相手に調停を行ってきました。

2.西明石詰所,大阪詰所,京橋詰所,京都詰所など,乗務員業務の乗り継ぎのために,これらの駅に乗務員詰所(休憩控え室)があって,喫煙自由であるため,Aさんは不快感,健康不安感を1999年7月から上司に訴え,改善を要請してきましたが,上司がこの訴えを無視し続けたため,2000年6月に調停を明石簡易裁判所に申請しました。

3.第2回調停からは弁護士(大阪市営地下鉄職員の分煙裁判の時の吉田弁護士)も入り,会社側と話し合いが行われ,所属の明石車掌区では詰所は禁煙となり,別室を喫煙所とする改善が示され,200010月から実施されました。しかし大阪や京橋などについては全く改善が示されず,2001年3月6日の第6回の調停が不調に終わったため,提訴の相談を進め,原告として元車掌のBさんも加わり,大阪地方裁判所への提訴に至りました(2002年4月23日)。

4.JR西日本本社は1992年に本社新築時から,本社内の完全分煙を実施していますし,駅構内・プラットホームは喫煙所以外は禁煙となっています。車両も完全分煙が実施されています。しかし乗務員の詰所が殆どが喫煙自由で,非喫煙社員の健康を守る措置を取っておらず,対策要請に耳を貸さないのは間違っています。自らの会社の乗務員の生存にとって最も大切な健康と命を守らずして,乗客の健康・安全を守れるのか,その欠落姿勢に危惧を抱かざるを得ません。

5.現状の受動喫煙によるAさんは,不快かつ不健康を愁訴し,その心労とストレスを引き起こし,生涯にわたって健康リスクが高くなることは紛れもない医学的事実で,このリスクを強制負荷することはとうてい受忍できるものではないし,受忍させられる理由もありません。

6.乗務員の健康をタバコから守るための費用はそれほどかかるものではありません。喫煙室を別に設ければ良いだけの話です。乗り継ぎ駅は大きい駅なので,それだけのスペースや部屋は十分にあります。

7.この間,労働安全衛生法を所管する労働省(現在は厚生労働省)の兵庫労働局,及び労働省本省に,快適職場指針(空気環境におけるタバコの煙や臭いについて,労働者が不快と感ずることのないよう維持管理することとし,必要に応じ作業場内における喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずること)に則り,監督指導を要請しました。しかし「指針は法的強制力はない」との逃げの姿勢で,改善指導に全く動いてくれませんでした。国の健康日本21や国際的動きから言っても理解に苦しむことです。

8.本会(たばこれす)には当初からこの件で相談があり,アドバイスや弁護士の紹介など協力してきました。2001年9月には,本会からこの改善を求める要望書をJR西日本本社宛に提出しました(別添)が,改善には費用も時間もかかるので…,との電話回答があっただけで,改善はなされませんでした。

9.なお大阪市営地下鉄職員の提訴(1991年8月)は,当時の労働基準監督署の指導監督が入ったこともあって,職員を禁煙職場に異動させる和解案が大阪市から提示され,円満解決しました(1993年7月,訴訟は取り下げ)。

10.またJR東日本の駅員が,執務室の禁煙・分煙を求め裁判を起こしたことがありますが,1994年6月にこれを受け容れる和解案が裁判長から示され,勝訴的和解で解決したことがあります。