たばこ規制枠組み条約公聴会の参加報告

20001016日 記者会見
「子どもに無煙環境を」推進協議会 東京事務局長
全国禁煙・分煙推進協議会 事務局長
Can Do Harajuku 所長
宮崎恭一

期間:2000年10月12日、13日
場所:国際会議センター(CICG,スイス,ジュネーブ)
提出団体数:500以上
発表団体:164
  決算報告は別紙

概要

 10月16日〜19日の「たばこ規制枠組み条約」(FCTC = Framework Convention on Tobacco Control)の交渉会議(Negotiating Committee)を前に世界保健機関(WHO)は公聴会を企画した。8月31日までにFCTCに対する提案書を提出した団体が、さらに追加して発表する場を設けたのである。

 会議は国際会議センターの大会議室において12日−13日の2日間午前8時から20時までの予定で開催され、175団体が意見発表を申し出た。当日には164団体になっていたが、さらに10団体ぐらい発表時間にあらわれなかったため、両日午後3時30分までに終了した。164の発表団体のうち25団体がタバコ関連企業または農業、小売などの組織を代表していた。枠組み条約は最終的にはWHO加盟国が合意して初めて施行することになるので、この公聴会は、タバコ反対派vs賛成派のディベートとなっている。交渉会議(Negotiating Committee)は加盟国の担当者によって何回かにわたって意見交換がなされる。前後して政策戦略諮問委員会(Policy Strategy Advisory Committee)、科学諮問委員会(Scientific Advisory Committee)がもたれた。

 発表者が時間の調整が出来なかったこともあると思うが、アジアの国々からはタイ、バングラディッシュ、パキスタン、インド、マレイシア、フィリピン、台湾、香港、中国、日本のみであった。ただし香港、中国はタバコ関連代表のみである。

 基本的には反タバコ関連者の発表は、先の「WHO神戸会議」(1999年11月)や「第11回タバコか健康か世界会議」(2000年8月)でも宣言されたように、

「未成年の喫煙防止」
「タバコ税の値上げ」
「タバコ広告の全面禁止」
「自動販売機の撤廃と禁止」
「受動喫煙対策」
「タバコ成分の全面表示と規制」
「タバコの非課税制度の廃止」
「ニコチン依存者対策」
「警告表示を含むラベル規制」
「未成年への禁煙教育の充実と資金の確保」
「タバコ農家、タバコ国家、タバコ関連企業者への転換対策」
「値段の違いによる密輸の対策」

などを各国の事情とあわせて強調し、FCTCの充実が訴えられた。

 一方、タバコ産業およびタバコ関連団体からの発表は「未成年の喫煙」はよくないが「大人の喫煙」許されるべきであり、現在の喫煙者に対するサービスも必要との従来の意見を繰り返した。また、特徴としては中国専売公社、フィリップ・モリス社、JTに対して、諮問委員から「あなたがたはタバコが健康に害があるということを認めるのか」という質問がなされたが、「タバコの害は認める」との発言をしていた。「具体的にはどのような病気か」という質問には、「肺がん、肺気腫、心臓病など」とはっきり答えた。
 受動喫煙に関しては意見を濁していたが、害を認めた上で現存維持を各国代表に納得させようというのが意図なのであろう。またどのタバコ産業もできるだけリスクの少ないタバコを開発して、成分内容を明らかにし、
WHOなど健康関連機関と協調していきたいとも述べていた。フィリップ・モリス社を中心にJTおよび日本政府、中国専売公社(中国では政府として禁煙キャンペーンはしているが)が手を結べば強力な包囲陣となり、各国への懐柔作戦が展開されることが予想される。
 なかでも発展途上国でタバコによって資金を運用している国々は同調して行くことになり、結局厳しい規制を設けることへの困難さは目に見えている。それらの現状を乗り越えて、年間400万人がタバコ関連疾患によって死んでいくことに歯止めをかけなければならないという、経済と健康問題の対立ともいえるだろう。

 今回「子どもに無煙環境を」推進協議会、全国禁煙・分煙推進協議会らが呼びかけて、日本からは上記の団体のほか「たばこ問題NGO協議会」、「喫煙か健康か女性会議」、「禁煙教育を考える会」、「日本禁煙推進医師歯科医師連盟」、「青森県喫煙問題懇談会」、「愛媛小児科医師会」、「新居浜医師会」などが提案を出している。
 そのうち「子ども」、「全国」、「青森」、「愛媛」、「新浜」の5団体の提案を宮崎恭一が
JTの問題点を加えながら発表した。各団体5分の時間があたえられたので、日本の立場を25分間スピーチすることができたことになる。文章を読まないで現状を説明したので、各国の代表は好意的に評価してくれた。具体的なタバコ産業の現状を世界に向かって、もっと情報を流す必要を実感した。詳しくはホームページ参照。http://www3.ocn.ne.jp/~muen/

FCTC設定の流れ

  1. 第52回世界保健総会(WHA)1999年にFCTCを2003年までに施行することを決議。
  2. 第53回世界保健総会 2000年FCTCを議定書より優先して作成するよう決議。
  3. 第53回世界保健総会にて2000年3月に第2回策定委員会が修正案を承認。
  4. 2000年3月策定会議提案をWHO/FCTCとして提案。
  5. 2000年3月策定委員会提案の主要議定書の主題を提案。
  6. 2000年9月修正案提出。
  7. 2000年8月までに予算、日程の提案。
  8. 2000年10月FCTC公聴会
  9. 2000年10月第1回FCTC調整委員会(今後年に4回ぐらいのペースで会議)
  10. 2003年FCTC制定、施行

 

世界保健機関 事務局長によるタバコ公聴会に関する発表

グロー・ハルレム・ブルントラント事務局長
2000年10月13日

 FCTCについて意見を応募したところ、WHOは500団体から提案文が届き、即座にWHOのウエブサイトに公開した。160団体以上の団体が現在意見表明をジュネーブでしている。それらの団体は大手の国際タバコ産業や国のタバコ会社およびタバコ農家の団体と、まったく反対の立場をとる公衆衛生機関、女性グループ、地域に基盤をおく団体、また研究機関などである。

 公衆衛生に関連する全ての団体は、現在と未来における人々のタバコ使用の影響、特に発展途上国における諸問題について非常な感心を示している。かれらは迅速で明確な行動を願っている。一方、多くのタバコ会社は信念をもって「責任」の範囲とか「適切」な行動などに的を絞っている。ある人々はWHOの役割とFCTCの経緯においてタバコの健康影響を減少させるため行動を促進し発展させることに疑問をはさんでいる。さらに、いくつかのタバコ産業は受動喫煙が健康障害をもたらすことを否定し続けている。

 一般的に、タバコ産業は彼ら独自の政策、標準など支持してきたが、それらは未成年や大人のタバコ消費にはほとんど影響しない代物である。逆にWHO、世界銀行、公衆衛生専門家がタバコ使用に関して評価でき維持できるといった介入プログラムには反対しているのである。

 WHOらが提案している事項は次のものがある。

 私は各国がFCTCやそれぞれの国の法律や条例を熟慮するさいに、上記の介入課題に焦点を当ててもらいたいと願っている。 (以下略)