「健康日本21」に対する意見−主にたばこ対策について

                            喫煙対策研究会 野上浩志   99/9/21

1.自由化や規制緩和の名のもとに,たばこ販売店の制限がここ10年にわたり緩められ,

  その結果として未成年者がよく集まるコンビニで未成年者がより自由にたばこを入手

  するようになりました。酒販売も同様です。憂慮されていたとおりです。

 ・たばこや酒のように,未成年者に有害で依存性のために年齢制限のある物品を販売自

  由化することは,国の施策として基本的に誤っています。青少年有害図書の規制例を

  みればわかることですし,これに反対の人は業者以外いません。

 ・国民特に青少年の健康づくりを所管する厚生省が,このような売る側の利益のみを優

  先させ,未成年の健康を危うくする結果を招くことになる,誤った国の施策をくい止

  めていただかない限り,「健康日本21」など,夢のまた夢にならないでしょうか。

 ・未成年に健康上有害で年齢制限のある物品の販売は,法的に厚生省が必ず関与し,か

  つ規制強化をする方針を是非明確にしていただき,未成年者の健康のために,たばこ

  や酒の自由化や規制緩和を打ち止め,再度規制強化を進めることを国の施策としてい

  ただくよう望みます。

2.たばこや酒の健康に関係する法律は,厚生省が所管すべきです。それがすぐに無理な

  場合は,暫定的にでも共同所管すべきです。

   例えば,「未成年者喫煙禁止法」や「未成年者飲酒禁止法」に厚生省が全く関与し

  ない・関与できないのは,国民の健康づくりの面から全くおかしいと思います。また

  たばこの注意表示や成分表示,広告規制等の権限を,大蔵省(たばこ業界を育成し,

  たばこ税を徴収し,かつ予算査定権を握る大蔵省)が所管し,結果的にわが国のたば

  この健康対策を大きく妨げているのはひどくおかしいことです。

   たばこの販売拡大に大蔵省が手を貸して,一方で厚生省が喫煙率・量を半減させる,

  と表明してもかけ声倒れになりかねないことは目に見えています。

 ・1に述べたことを含め,国の施策として「健康日本21」を推進する以上,整合性の

  ある一元的な枠組み・仕組みの確立が不可欠のはずです。省庁再編等にあわせ,この

  点を強力に進めていただかない限り,10年での目標達成は不可能ではないでしょう

  か。

3.「健康日本21」の最優先の課題はたばこ対策にあるように総論と各論から読みとれ

  ます。そうであるなら,厚生省内に「たばこの健康対策室」を設け,かつ政府レベル

  の「たばこ対策本部」を設けるところまで踏み込むべきだと思います。

   WHOの枠組み条約の動きもあって,厚生省だけでなく,政府レベルでのたばこ対

  策を進めうる可能性もありうるかも知れないようで,既に検討されているのかも知れ

  ませんが,上の1,2を含め,期待しています。

4.それにしても,男性喫煙率の減少はここ10年で10%以下で,たばこの害が叫ばれなが

  らも減少率は20数年来ほぼ一定です(1%前後/年)。このままの推移であれば,

  2010年には約41〜44%です。半減の27%前後にするためには,これまでの減少率の2

  〜3倍前後の2.5%/年の減少率とさせる必要があります。(下記に図及び表別添)

   今後10年で半減させる計画は素晴らしいのですが,たばこ分科会中間報告に書かれ

  た抽象的な対策だけは至難です。上記3までが実施されたにしても,また国際的な対

  策が加わったにしてもなお至難なように思います。現実的なものとするために,いく

  つかのケースを想定した目標値の設定とその説明,及び具体的な施策目標とスケジュ

  ールを盛り込んでいただいてはどうでしょうか。

   例えば,自販機が撤廃された場合,コンビニ等で年齢証明提示を義務づけた場合,

  公共の場の禁煙法を制定した場合,広告制限した場合,正しい注意表示をした場合,

  たばこ関連法の厚生省所管とたばこ対策本部設置が実現した場合,これらがその他と

  相乗のあった場合など。


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表1 1999年JT発表の成人男子喫煙者=54.0%
をもとにした試算結果

  

2010年の
成人男子喫煙率%

年間の成人男子の
喫煙者減少数概算(万人)**

@過去35年の自然減少外挿
  (0.87%/年)

44.4

42

A1995年以後の自然減少外挿
  (1.19%/年)

40.9

57

B1.5%/年の減少

37.5

72

C2.0%/年の減少

32.0

97

D2.5%/年の減少

26.5

121

                     * 1999年の成人男性喫煙率=54.0%で計算 
                     **1999年の成人男性4830万人として計算
                           喫煙対策研究会 野上 試算