仁志訴訟を振り返って

 

主任 弁護士 吉 田  肇

 

1.仁志健一君が私のもとを訪れたのは、弁護士会の紹介だった。

  困難な事件だが、具体的な被害が発生している以上、その救済のためにあらゆる可能な手段を
  採ろうというのが、当時の正直な心境だった。

2. 多坂市を相手に調停を申し立てたが、多坂市の態度はかたくなで調停は不調に終わり、いよい
  よ裁判の準備ということになった。

  当時の主治医からお話しを伺い、手弁当で協力してくれる弁護団を募り 、市民団体「たばこれ
  す」の皆さんにも実情を訴えて支援をお願いした。

  何とか、勝利的和解でこの事件は解決することができたわけだが、教訓のようなものをあげる
  とすれば以下のようなことになろうか。

  第一に、仁志君本人の頑張りである。職場の問題を裁判に訴えるということは当然将来の昇
  進などへの影響を考えれば勇気のいることだが、よく最後まで頑張ったと思う。

  第二に、支援をして下さった方々に、知識の点でもまた精神的にも随分力になって頂いたとい
  うことである。労働省の通達や参考文献等について随分と教えて頂いたし仁志君も励まされた
  と思う。この場を借りて深く感謝する次第です。

  第三に、手弁当でこの裁判の弁護人を引き受けて頂いた弁護団の皆さんの協力がなければ今回
  の和解はありえなかった。有り難うございました。

3.和解が成立した以降を見ても、職場の分煙を求める流れは、少しずつだが、着実に広がってき
  ていると思う。今回の裁判の経験がその流れを少しでも強める力になればと念願している。