平成10年4月15日

 
厚生省「21世紀のたばこ対策検討会」 御中


                    たばこれす
                    タバコと健康近畿協議会
                    「子どもに無煙環境を」推進協議会


  「21世紀の抜本的たばこ対策」のお願い
 
 謹啓,国民の健康,特に次代を担う子ども達の健康をたばこの害から守るために,
現在「21世紀のたばこ対策検討会」で,次世紀を展望したわが国におけるたばこ対
策の在り方が,国の英知を結集して論議されているとのこと,国民の多くが長年に
わたりたばこの害に苦しめられてきた状況が,やっと大きく変わり得る転機になる
ものと期待申し上げております。
 既にご審議いただいていることとは存じますが,この問題に長年にわたり取り組
んできました私どもとしましても,以下の点を是非とも対策に盛り込んでいただけ
ますようお願い申し上げます。
 
               記
1.たばこ対策推進のための対策本部を政府に設け,当面厚生省内にたばこ対策を
  推進する課・室を設けてください。
 (1)アメリカには,アメリカ防疫センター(CDC)や,Office on Smoking and
  Health(OSH,DHHS),National Cancer Institute(NCI),Advocacy Institute
  など,たばこ対策に関係する情報収集と調査,広報のための国の機関がいくつ
  かあり,それらが役割分担をし,民間の Coalition on Smoking OR Health や,
  他の多くの民間・市民団体と連携,協力して,総合的な対策を進めています。
 (2)カナダやオーストラリア,イギリス,フランス,北欧諸国などにも,たばこ対
  策のためのナショナルセンターや情報センター(Clearinghouse),あるいはそ
  れに代わる機関があり,民間団体と連携,協力して,総合的な対策を進めてい
  ます。
 (3)わが国でも,たばこの害から国民の健康を守るために,たばこと健康問題に関
  する情報を収集し,公表し,対策を進めるための包括的なナショナルセンター
  あるいは対策課・室の設立が不可欠です。既にわが国でも,「エイズ対策室」
  を設け,対策の実を進めたという先進的な事例があります。

2.「たばこの依存性とその離脱方法」の調査研究班を発足させてください。
 (1)たばこは嗜好品であり,マナーの問題との発言があります。一般的に法規制か
  モラル(マナー)かの問題は,迷惑の程度と,その人数によります。喫煙行為
  は,他人の健康を害し,かつ多数の人間がその害をこうむるのですから,個人
  の嗜好やマナー論では済まない問題です。しかもたばこには依存性があります。
   喫煙者の約7〜8割は「たばこを止めたい」と思っています。このような嗜好
  品はあり得ません。
 (2)喫煙者や未成年者の多くがこの依存性のために禁煙できず,自らの健康を害し
  ています。受動喫煙の害の医学的な証拠が明らかになっている現在,国民の健
  康をたばこから守り,社会的なトラブルをなくすために,「たばこの依存性」
  の実体と状況を調査研究し,その離脱を促す方法の開発研究を国として進める
  ようお願いします。

3.公共の場(交通機関,道路,スポーツ施設やレストラン等を含む)は全て禁煙
  (隔離された換気の良い喫煙所を設けられる場合のみ分煙)とするよう,包括
  的な(他省庁の権限にとらわれない)「公共の場の禁煙・分煙法」を制定して
  ください。
 (2)特に近年問題となっている「歩きたばこ」は,周りに傷害を及ぼす危険性が大
  きく,かつ周りに健康被害と迷惑を及ぼします。ポイ捨てや投げ捨ては火災の
  原因にもなっています。喫煙者のマナーではこの「歩きたばこ」はなくなりま
  せん。法的な対策により,社会的ルールづくりが必要な時期が来ています。
 (3)喫煙所を別に作る場合の費用の一部は,製造物責任者である日本たばこ産業
  及び日本たばこ協会加盟各社に拠出を義務づける内容を盛り込んでください。

4.増加の一途をたどる未成年者の喫煙実態と要因を調査し,未成年者の喫煙問題
  の改善のための抜本的な対策を,関係省庁と協議し,制定100周年を迎える
未成年者喫煙禁止法」の実効性強化を打ち出してください(例えば,たばこ
    の自動販売機や,未成年者も対象にした雑誌等のたばこ奨励記事や広告は,
    未成年者喫煙禁止法の第四条に抵触しています)。

5.喫煙・受動喫煙による疾患の一次予防のための啓発・対策,受動喫煙の害・迷
  惑の啓発・対策,喫煙防止教育,禁煙指導,調査研究などのための予算の大幅
  増額や,地方自治体や公益法人だけでなく,民間団体,NPO団体への補助・
  助成事業(あるいは喫煙対策促進助成基金の創設)を進めてください。
 (2)都道府県,市町村,保健所,保健センター,医師会など保健医療機関,及び分
  煙対象機関が,具体的に分煙や対策に取り組めるよう,指針やマニュアルを作
  成し,また国としての予算措置を講じてください(例えば,保健所や保健セン
  ターが,貴管下の環境衛生事業協同組合や理美容組合,あるいは妊婦教室,一
  般住民などを対象に,禁煙教室を開催する指針を作成し,またその開催の国庫
  補助事業の実施するなど)。
 (3)民間の事業所を含め,分煙対策を講じた施設についての税控除を進めてくださ
  い。
 (4)たばこ消費税の一部を,それらの対策費,健康づくり事業,調査研究費,基金
  等への支出に充てるよう大蔵省や自治省に折衝してください。

6.「たばこ行動計画検討会報告書」や「公共の場所における分煙のあり方検討会
  報告」,あるいは今回の検討会報告を実効あるものとするために,これらを盛
  り込んだ小冊子を発刊し,誰もが手軽に入手し役立たせるようにしてください。
 (2)これら報告内容の周知徹底を,都道府県,市町村,保健所,保健センター,医
  師会,関係機関,及び分煙対象機関等に広く行い,対策の取り組みを促してく
  ださい。

7.たばこの広告宣伝や注意表示,自動販売機などは健康問題と不可分であり,
  れらの所管を厚生省等に移すことが,国民の健康を煙害から守る上で必須です。
  この所管替えを関係省庁で折衝するよう検討し,進めてください。
 (2)たばこの広告制限だけでなく,たばこについての注意表示に,たばこの有害性,
  周りへの害,ポイ捨てや失火などの迷惑・損害等についての注意表示を義務づ
  け,定期的に文を替え,またパッケージの表裏の半分以上の面積とするなど,
  対策を打ち出してください。
 (3)現行の「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょ
  う」は,「(損なう)おそれがある」という表現は「虚偽の表現」であり,「吸
  いすぎに注意しましょう」は「吸いすぎなければ健康を損なわない」と理解さ
  れ,「虚偽の表現」です。この表示は,たばこ消費者(喫煙者)にたばこにつ
  いて正しく注意を伝えておらず,使用の選択を誤らせています。加えてたばこ
  は周りにも多大の迷惑と健康被害を及ぼしているのに適正な注意表示がなく,
  これらは消費者保護基本法に抵触しています。
 (4)たばこの注意表示は大蔵省のたばこ事業等審議会で決められていますが,この
  審議会そのものがたばこの販売拡大のためのものであり,国民の4分の3を占
  める非喫煙者の意向を全く反映せずに運営されています。このような審議会が,
  たばこの注意表示を決めることは消費者保護基本法第十条等に照らして違法で
  す。
                                  敬 具
  
    戻る