けむりの部屋
 

 

 


                      絵と文 柿本香苗,柿本千春 

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 表 表紙 (カバー)

 

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孝太郎 「やぁ、みなさん こんにちは。

僕の名前は田葉孝太郎。

 

僕は タバコをこよなく愛する男なんだ。

 

実は 今日 タバコ仲間の友人から

すごい情報を得たんだ…」    

       −ぬ く−

 

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2

孝太郎  「あ、あったぞ。

ここがうわさの “けむりの部屋” か…

 

なんでも いくら吸っても 吸いきれないほどのタバコを わけてくれるらしい。

ちょっとばかり 怪しげ だけど…

 

よしっ、入ってみよう。」

−ぬきながら−

ギィー

 

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  「いらっしゃいませ。

たばこうたろうさん ですね。」

孝太郎 「あ、はい。あの…どうして僕の名前を…」

  「はい、すべてわかっております。

コーヒーお飲みになりますか?」

孝太郎 「いや、けっこうです。ぼくは ここで タバコをいただけると聞いてきたんですが、すぐに見せてもらえるのですか。」 

                                   − ぬ く−

 

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4

  「ずいぶんと お急ぎのようですね。」

 

孝太郎 「ああ、 これか これがうわさのシガレットケースか

   「ところで あなたは、一日何本くらいお吸いになるのですか。」

孝太郎  「そうだなぁ。まあ40本は吸うと思うがね、ああっ、そんなことより早く中を見せてください

女    「では どうぞ」          

ゆっくり抜く

 

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5

孝太郎 「おおっ…」

                  −

  「このシガレットケースには、百本のタバコが入っています。そして、あなたが何本取り出して吸っても ふたを閉じれば、またもとの百本に戻っています。つまり、吸っても 吸っても タバコは永久になくなりません。」

孝太郎 「おお 何ということだ、すばらしい お金の節約にもなるぞ

ああ、それにしても ずらりと並んでいるタバコを見ているだけでもうれしくなる!

 

でも… これは、買うとなると かなり高いんでしょうね。」               

  ぬ く−

 

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(6)

    「いいえ、 お金はいただきません。そのかわり私が 今 手にしているこの花を取ってきていただければ シガレットケースと交換して差しあげます。

 

これは きよらか草という不思議な花です。空気をきれいにする力を持っています。そして百個の種を結ぶ花なのです。」

孝太郎  「いったいそんな花、どこに咲いているんですか?」

           ゆっくりとぬく−

 

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女  「この先の道をまっすぐに行けば、きよらか草の咲く丘が必ず見つかります。

 

ただし一時間以内に戻ってきてください。

タバコをお吸いになるあなたには少しきついかも知れませんが…

 

花は根っこをつけて持ってきてくださいね。

 

では お待ちしております。」

 

           − しばらく間をおいてから、すばやくぬく−

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孝太郎 「ハァハァ…ゴホッゴホッ、なんてことだ。

すぐにタバコが吸えると思ったのに

こんな目にあうなんて…ハァハァ…ちょっと走っただけなのに 胸が 苦しいな… ゴホッゴホッ、

 

あの女の言うように タバコを吸っているせいなのかなぁ…

 

でもタダでタバコが吸えるようになるんだから、がんばらないと… よっこらしょっと

          ゆっくりぬく−

 

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孝太郎 「わぁ…すごいなあ… ここは いったい…

夢でも見ているのかな。

 

なんともいえない いい匂いだ…

これが きよらか草の丘なのか…」

            −

「おっと。」              − すばやくぬく−

 

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孝太郎 「これが、彼女が持っていたのと同じきよらか草のようだな。

 

ぼんやりしているひまはないぞ。

 

一時間まであと少しだ。早く帰らないと、せっかくの苦労が水の泡だ。

 

あの女、かわいかったけど なんだかきつねみたいだったし 厳しそうだからな。」  

 − ぬ く−

 

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幸太郎 「ハアハアハア…ほら、取ってきたよ。これでいいんだろ。

根っこだってちゃんとつけてきたぞ。

は、はやくタバコをくれ

女  「間にあいましたね、もっとゆっくりしてこられてもよかったのに。 では差しあげる前に一言…

 

ご承知とは思いますが、タバコは百害あって一利なしです。 病気になりやすいし、周りの人の害にもなります。きよらか草を植えて きれいな空気をふやして タバコをやめませんか。

あなたも 周りの人も 健康になりますよ。

そんなお考えがあれば、花を持って 青色の扉からお帰りください。」

孝太郎 「何をばかなことを言っているんだ。

早くシガレットケースをくれっ

タバコが欲しくって花を取ってきたんだっ。」

女  「わかりました。それは残念ですね。

それでは、赤い扉のむこうの部屋でお吸いください。           − ぬきながら

バタン               

 

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孝太郎 「ふぅー ごちゃごちゃとうるさいことを言う女だ。 

あー ふうー

 

ふっふっふっ 二本一度に吸っても構わないんだ。

いっぺんやってみたかったんだ。

ふぅー

 

あれ? ゴホッゴホッ、

けむりが引かないぞ。窓を開けよう。」

すばやくぬく−

 

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孝太郎 「あっ、なんだこりゃ あっち側に人がいる…

お、おれのいる所とそっくりだ。

 

それにこの部屋、窓がないぞ。換気扇もない。

いったいどうなっているんだ…

あれっ 入ってきたはずの赤い扉もなくなっている…」                         

 − ぬ く−

 

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孝太郎 「もしかして これが “けむりの部屋” なのか?

 タバコの煙はどこにもいかない。

吸い込むしかないのか…

 

煙たい… 苦しい…

おおーい、窓を開けてくれー

ゴホッ ゴホッ ここから出してくれー

おーい 助けてくれー…」     

−ぬ く

 

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 「孝太郎さん、“けむりの部屋”はいかがですか。あなたがそこを選んだのですよ。

もし きよらか草があったら その中の空気をきれいにしてくれるのに。

そしたら どんなにすてきでしょうね。

だれもがきれいな空気を吸う権利をもっているのです。

タバコは確実に空気を汚し、人の命を縮めるものです。あなたの命も…。

 

けむりの部屋で 実感してくださいね。

それでも タバコを吸い続けますか?

 

きよらか草の種を一緒にまいてみませんか?…」

                   おしまい

 

 

制作・発刊 NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会 200412月発刊)