社説 [受動喫煙法案] 都条例参考に見直しを
2018/7/5 付 南日本新聞 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=93733
東京都の受動喫煙防止条例が成立した。従業員を雇う飲食店は店舗面積にかかわらず、原則屋内禁煙とするのが条例の柱だ。
一方、衆院で可決され、参院で審議が始まる健康増進法改正案は原則禁煙としながら、客席面積100平方メートル以下の既存飲食店は例外として喫煙を認めている。都条例よりかなり緩やかである。
いずれも2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えた対策だが、都条例の方が実効性が高いのは言うまでもなかろう。国もさらに踏み込んだ対策を講じるべきである。
都条例は働く人や子どもを受動喫煙から守ることに主眼を置いている。都内の飲食店の約84%に当たる約13万軒が従業員を雇用しており規制の対象になるという。
一方、改正案では飲食店の約55%が例外として喫煙できることになる。受動喫煙対策として手ぬるさは否めない。
また、学校や病院、行政機関での規制にも開きがある。改正案が屋外での喫煙を認めているのに対し、都条例は保育園や幼稚園、小中高校は屋外の喫煙場所設置も認めない。
東京は人口や飲食店数が圧倒的に多く、条例のインパクトは大きい。全国の自治体に広まることも期待される。
世論も改正案に厳しい。日本世論調査会が6月上旬に実施した調査では「面積を狭くして喫煙できる店を減らすべきだ」「全ての飲食店を禁煙にすべきだ」との回答が半数を超えた。
また、肺がん患者の会からは「人を大切にするよう教える学校の敷地で喫煙が認められるのはおかしい」との声も挙がっている。
希望の党と日本維新の会は、例外として喫煙を認める飲食店を30平方メートル以下の居酒屋やスナック、バーに限定するとした対案を参院に共同提出している。
受動喫煙が原因で国内では年間1万5000人が死亡するとの推計もある。都条例と比較しながら改正案を練り直してはどうか。安倍政権の本気度が問われる。
都条例に対しては飲食業界から反発が出ている。「全面禁煙はやり過ぎ。お客が離れて売り上げが減ってしまう」といった懸念が根強いようだ。罰則付きの条例で規制する以上、分煙対策を同時に進めることも欠かせないだろう。
自治体によっては路上禁煙地区を指定したり、歩きたばこ禁止を呼び掛けたりしている。だが、喫煙者のマナー違反が目につくことが少なくない。受動喫煙を防ぐためにもマナーを守る大切さを、喫煙者は改めて自覚したい。