2018/7/18(水) 16:30配信 BuzzFeed Japan Medical https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180718-00010002-bfj-soci&p=1
受動喫煙対策が骨抜きにされた改正健康増進法が7月18日、参議院本会議で賛成多数で可決、成立した。今年中から段階的に施行され、東京オリンピック・パラリンピック直前の2020年4月から完全施行される。
当初は、30平方メートル以下のバーやスナック以外は飲食店を原則禁煙とする案が検討されていたが、自民党の激しい抵抗で提案をあきらめた。面積基準など規制が元の案から大幅にゆるめられた改正案が今国会で審議されていた。
受動喫煙の健康被害は科学的に明らかで、肺がんや脳卒中のリスクは1.3倍に、心筋梗塞などのリスクも1.2倍に増え、日本では年間1万5000人が受動喫煙によって死亡しているとされる。
受動喫煙の健康被害を長年訴えてきたがん患者団体の代表者らは、「成立したことは一歩前進だが、不十分な法律であり早期に見直しを」と訴えている。
患者団体ら受動喫煙対策の強化を訴える人たちが問題視していたのは、既存の飲食店と学校、そして加熱式たばこの規制内容だ。
主に以下の3点が不十分だと指摘されてきた。しかし、この内容は変えられることなく原案通り可決した。
(1)客席面積100平方メートル以下で資本金5000万円以下の飲食店は喫煙可能としてもいい経過措置が設けられること。
(2)小中高校など子供の利用する施設でも、屋外に喫煙所を設けることができるようにしていること。
(3)IQOS(アイコス)やPloom
TECH(プルーム・テック)など加熱式たばこについては紙巻きたばこと別扱いにし、飲食店内に喫煙専用室を設ければ飲食しながらの喫煙も可能とすること。
面積基準による経過措置の対象となるのは、飲食店全体の55%と推計されている。つまり、半分以上の店は今後も受動喫煙が野放しになるということだ。
ただし、新規開店の飲食店は、屋内禁煙が徹底される。
これについて、厚生労働省は、2年間で全体の2割弱が、5年間で約3割強が新たに出店することに触れ、「入れ替わりの激しい業界なので、この規制でも一定の効果が見られるはずだ」と説明している。
今国会で衆参両院の厚生労働委員会で参考人として受動喫煙対策の強化を訴え、自民党の穴見陽一衆院議員から「いい加減にしろ」とヤジも飛ばされた日本肺がん患者連絡会理事長の長谷川一男さん(47)はまず、改正法成立を歓迎した。
「素直に嬉しく思います。右往左往してきた経緯があまりに長く、法律ができないのではないかという懸念もありました。今、一歩進んだ、と理解しています」
「これから実生活が変化していきます。受動喫煙に関して、『マナーの問題』『迷惑をかける、かけていない』という表現がありますが、『健康危害』なのだという正しい理解が進んでくれると嬉しいです」
長谷川さんは当初、受動喫煙対策を啓発していくことにためらいがあった。肺がん患者仲間には元喫煙者がたくさんおり、仲間を傷つけることになるかもしれないと思ったからだ。
しかし、ある仲間の男性が「俺はタバコを吸って肺がんになり後悔している。病気になってからでは遅いから、今訴えないといけない。やりましょう」と背中を押してくれた。一緒に法律を厳しい内容にするよう訴える冊子も作った。
その仲間は2ヶ月前に亡くなった。
「法律ができたことを一番喜んでいると思います」
ただし、「成立した法律の内容は不十分であるとも思っている」と注文をつける。
「学校で喫煙することを認めていますし、加熱式たばこの取り扱い、55%の飲食店が喫煙可能となるなど、原則と例外の逆転の問題があります」
「施行5年経過した段階で検討し、必要とあれば措置を講ずるとありますが、施行は2020年でそこから5年ということは検討は7年後になる。それでは遅すぎます。速やかに実態調査を行い、真に国民の命を守る受動喫煙対策を進めてほしいと願っています」
やはり、衆院厚労委員会で参考人として意見を述べた全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介さん(44)は、国会で傍聴しながら可決成立を見守った。
「法案が成立したという点において半歩前進なのですが、国会審議において面積基準も加熱式たばこの取り扱いも、学校での喫煙が可能になったことも含め、与野党ともに不十分だという声があがっていました」
法案成立を評価しつつも、さらにこう要求した。
「衆参両院で経過措置などの実態調査と適切な措置を求める付帯決議がつきましたので、それにのっとり、早期に見直しを検討していただきたい。国民の健康と命を守るために、受動喫煙をゼロにするという国の目標を踏まえると課題が多く、これはあくまで第一歩に過ぎません」