次期がん対策計画案、受動喫煙の目標値盛り込まず
厚労省がパブコメ開始

2017年09月29日 15:30 CBnews https://www.cbnews.jp/news/entry/20170929145750 

 

 厚生労働省は28日、「第3期がん対策推進基本計画」(基本計画)案に関するパブリックコメントの募集を始めた。案では、がんに関するゲノム医療の推進や、手術療法、薬物療法の充実などに取り組む方針を示した。一方、懸案事項だった受動喫煙の目標値は盛り込まなかった。募集は10月11日まで。

 3期目の基本計画は、2017年度から22年度までの国のがん対策の方向性を示すもので、これに基づいて各都道府県は「都道府県がん対策推進計画」を策定する。基本計画案では、がんの克服を目指すことを全体目標に掲げ、「予防」「医療の充実」「がんとの共生」を3本柱にして具体的な施策に取り組むとした。

 「医療の充実」について、国は今後、がんゲノム医療をけん引する「中核拠点病院」を整備するとともに、がん診療連携拠点病院(拠点病院)や小児がん拠点病院を活用したがんゲノム医療の提供体制の整備を進める。これにより、患者が全国のどこにいてもがんゲノム医療を受けられる体制を段階的に構築する。

 また、ゲノム情報に基づく適切な診療提供や革新的な治療の開発を目的として、国は拠点病院や小児がん拠点病院での診療や治験などで得られたゲノム情報や臨床情報を集約した上で、質の高いデータベースやバイオバンクを整備。集約したゲノム情報などを管理・運用し、それらのビッグデータを効率的に活用するためのAIの開発を可能とする「がんゲノム情報管理センター」(仮称)も整備する。

 さらに、国は身体への負担の少ない手術療法や侵襲性の低い治療などを普及させるほか、薬物療法を受ける外来患者の服薬管理や副作用対策などを支援するために、拠点病院とかかりつけ機能を持つ医療機関や薬局との連携強化のための施策を講じる。さらに、薬事承認を受けた免疫療法が提供される場合、関係団体の指針などに基づいた適切な免疫療法の実施を推進する方針も示している。

■成人の喫煙率、22年度までに12%に

 がん予防のためのたばこ対策では、「喫煙率の減少と受動喫煙防止を図る施策等をより一層充実させる」とした。また、15年は18.2%だった成人の喫煙率を22年度までに12%に下げる目標値を設定したほか、妊娠中の女性や20歳未満の若者の喫煙をなくすことも目標に掲げた。一方、受動喫煙に関しては数値目標を記載しなかった。

 受動喫煙の目標値をめぐっては、第3期基本計画の作成に向けて検討してきたがん対策推進協議会が6月の会合で、20年までにあらゆる場所で受動喫煙をなくす方針で一致していた。この方針を基本計画に盛り込むには健康増進法との整合性を取る必要があるが、同法改正案は厚労省と自民党との調整がつかず、通常国会での提出が見送られた。

 このため、基本計画案の中で受動喫煙の部分の内容が決まらず、厚労省が今夏を目指していた第3期基本計画の閣議決定が遅れていた。ただ、これ以上遅れると、都道府県がん対策推進計画の策定などに支障が出る可能性があることから、厚労省は受動喫煙の目標値を盛り込まずに、第3期基本計画を閣議決定するのが妥当だと判断した。