新型たばこもNO!コロナ重症化の最大リスクは喫煙、米調査で感染者の2割が持つ慢性肺疾患の注意点
2020.6.1 17:00 AERA https://dot.asahi.com/dot/2020052900044.html?page=1
基礎疾患を持つ人は、新型コロナウイルスに感染した場合、重症化しやすいとされる。なかでも慢性肺疾患を持つ人が注意すべき点、通常の治療をどうすればいいかなどを専門医に取材した。
アメリカの調査では、重症化して集中治療室に運ばれた新型コロナウイルス感染患者のおよそ5分の1が慢性の肺疾患を有している実態が示された。日本ではどうなのだろうか。
「現段階では明確な割合はわかりませんが、重症化しやすい基礎疾患のなかに慢性の肺疾患が含まれるのは、日本も同様だと思います」
と、日本大学板橋病院呼吸器内科部長・主任教授の權寧博医師は話す。
慢性の肺疾患といっても多々あるが、現在までの研究・調査で「新型コロナウイルスの重症化、予後不良因子」と指摘されている疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)だ。
「新型コロナウイルスは、肺の中の肺胞という酸素を取り込む場所に感染して、肺を破壊します。COPDはその肺胞が喫煙などで壊れる病気のため、より重症化しやすいのでしょう。新型コロナウイルス肺炎が重症化して、救命できたとしてもCOPDの状態が一段階悪くなる可能性もあり、要注意です」(權医師)
一方、代表的な肺疾患の慢性気管支喘息は、感染後に重症化しやすいかは議論のあるところだという。
「軽症の喘息ならば感染しても重症化にはつながらない印象です。発作が見られる重症喘息、週に何度か症状が出る方、喫煙している方は、COPD同様の重症化リスクがあると考えます」(同)
COPDや喘息がある人は、空気の通り道である気道の免疫力が低下している。健康な人よりも、感染しやすいということはないのだろうか。
「新型コロナウイルスに関しては疫学的な証明がなく、わからないというのが回答になります。ただ、一般的にはインフルエンザなどのウイルス感染症にはかかりやすいです。COPDや喘息の患者さんは、気道についたウイルスに反応して、抑制的に働く物質を出す能力が下がっていることがわかっています」(同)
■COPD、喘息の服薬の中断はリスク
新型コロナウイルスはACEIIというたんぱく質を目印に感染することがわかってきたが、COPDや喫煙者の肺では、このたんぱく質が増えていることも不安要素だ。
なお、肺疾患の保有者が仮に感染した場合、せき・たん・息切れの呼吸器症状が出やすく、無症状ではいられないことが多いという。大切なのは持病の治療を続けることだ。
「感染が怖くて通院したくないという気持ちもよくわかります。状態が安定していれば電話やオンラインによる診療を利用するのもいいと思いますが、かかりつけ医の予約診療は通院してほしいです。特に喘息は症状に合わせて薬の量を調整することが、気道の炎症を取るためには重要です。COPDも服薬の中断は病気の進行を加速させ、ウイルス感染のリスクを高めることになります」(同)
感染予防の観点から慢性肺疾患の患者が特に気をつけるべきことを聞いた。
「日本呼吸器学会も声明を出しましたが(4月20日付)、強調したいのは禁煙です。新型たばこを含めて、手を口元に近づける行為が感染の素地となるなど、中国・武漢の患者の解析から、年齢や基礎疾患に勝る最大の重症化リスクであることが明らかになっています。家族で家に籠もる状況では受動喫煙の問題もあり、この機会に禁煙してください」(同)
<取材した医師>
日本大学板橋病院 呼吸器内科部長・主任教授 權 寧博医師
新型コロナウイルス感染者の重症化の疾患別割合 (週刊朝日2020年6月5日号より)。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部を特設サイトで無料公開中。