社説:受動喫煙対策 県を挙げた議論急務だ

2018年8月16日 秋田魁新報 https://www.sakigake.jp/news/article/20180816AK0011/ 

 

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が7月に成立したが、その規制内容は世界水準に遠く及ばず、「不十分だ」との声が根強い。そうした中、自治体独自に規制をしようという動きが活発化している。

 本県でも、先ごろ開かれた県たばこによる健康被害防止対策検討委員会の本年度初会合で、県が改正健康増進法より厳しい独自規制が必要かどうかを検討する考えを示した。健康寿命日本一を目指す上でも有効な対策が不可欠であり、新たな条例制定も視野に議論を深めてほしい。

 改正法は、多くの人が集まる建物内を罰則付きで原則禁煙とする。来年夏をめどに病院、学校、行政機関、保育園が屋内完全禁煙。2020年4月からは飲食店や事業所、ホテルのロビー、パチンコ店などの遊興施設、鉄道などが原則禁煙となる。

 一方で資本金が5千万円以下で客席面積100平方メートル以下の既存飲食店は「例外」として扱われ、店頭に「喫煙可」などと表示すれば経過措置として店内で喫煙を認める。これだと飲食店の55%で喫煙が認められるとの試算がある。

 厚生労働省によると、受動喫煙が原因とみられる国内の推計死亡者は年間1万5千人。同省は当初、東京五輪・パラリンピックが開催される20年までに飲食店での受動喫煙ゼロを目指していた。だが、自民党の抵抗に遭い、国際水準に程遠い法案内容を受け入れた経緯がある。

 世界保健機関(WHO)は各国の受動喫煙規制の状況を4段階に分けて示しており、一般の人が集まる場(医療施設、行政機関など8種類)の全てに屋内禁煙を義務付けている最高ランクの国は17年調査で186カ国中55カ国にも上る。日本は今回の法改正により、最低に位置していたランクを一つ上げるだけだ。さらに上げるためには飲食店、事業所などの屋内完全禁煙が必要となる。

 こうした中、都道府県では神奈川県や兵庫県に続き、今年6月に東京都で罰則を伴う条例が成立した。従業員を雇う飲食店は店舗面積にかかわらず原則室内禁煙とするのが柱。都内の飲食店の84%が対象になるという。25年の国際博覧会の誘致を目指す大阪府も条例制定の検討を本格化させている。

 健康寿命日本一を目指す県はことし、「健康秋田いきいきアクションプラン」を策定。健康づくり対策として「栄養・食生活」「身体活動・運動」「たばこ」の三つを柱に据えた。

 「たばこ」に関しては検討委が今後、受動喫煙防止に向けた具体的な規制内容などを議論する。健康被害を受けやすい子どもを守るためにどんな規制が必要か。県民の幅広い意見をくみ上げることが求められる。最大の検討課題である飲食店に対しても実効性のある対策が急務だ。市町村とも連携し、県民を挙げた議論を期待したい。