2017年5月6日18時27分 朝日 http://digital.asahi.com/articles/ASK4W6H5JK4WULBJ00L.html
たばこを吸わない人が受動喫煙によって肺がんや脳卒中などにかかり、余計にかかる医療費が2014年度1年間で3233億円に上るという推計を厚生労働省研究班(研究代表者、中村正和・地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター長)がまとめた。
研究班は、昨年9月に公表された「たばこ白書」で、たばこと病気の因果関係が十分と推定された肺がん、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの虚血性心疾患にかかる医療費を推計した。
配偶者からと職場での受動喫煙を考慮し、40歳以上の患者数や喫煙の有無による病気のなりやすさの違いなどをもとに計算した。受動喫煙によって肺がんにかかるのは約1万1千人で335・5億円、脳卒中は約12万9千人で1941・8億円、虚血性心疾患が約10万1千人で955・7億円に上った。
同様の手法で医療経済研究機構(東京)が推計した肺がんなどにかかる05年度の医療費は1431億円だった。今回新たに、脳卒中と虚血性心疾患を加えたことで大幅に増えた。
また、研究班は喫煙者の医療費も推計した。たばこを吸うことで余計にかかる医療費が、肺や胃のがん、脳卒中、虚血性心疾患などで1年間に1兆1669億2千万円に上るとした。
調査した、東京大の五十嵐中(あたる)特任准教授(医薬政策学)は「因果関係が確実なものに絞って推計したが、喫煙が社会に与える影響は大きいことが改めて示された。受動喫煙で健康を害される人がいることを重視すべきだ」と話す。
日本では8割が非喫煙者だが、屋内全面禁煙が進まないため飲食店や職場などでの受動喫煙が減らない。厚労省によると、受動喫煙による死者は年間約1万5千人と推計されている。