(社説)たばこ規制 自民党よ、都連に続け

2017年5月31日05時00分 朝日 http://digital.asahi.com/articles/DA3S12964081.html 

 

 7月投開票の東京都議選にむけて、ほとんどの政党が選挙公約に受動喫煙対策を盛り込む方針を打ち出している。

 2020年の東京五輪・パラリンピックに備え、公共施設や飲食店などを「全面禁煙」「原則禁煙」とする都条例を制定しようというものだ。

 具体案が示されていないため細部の評価は難しいが、政策を競い合い、関心が高まるのは結構なことだ。同時に「五輪対策ならば東京だけがやればいい」という話にならないよう、目を光らせる必要がある。

 飲食店をふくむ屋内での禁煙や分煙を義務づける条例づくりは、2年前に検討されながら先送りになった経緯がある。都が設けた検討会では、条例によって損害を受けたと主張する業者から裁判を起こされる可能性を心配する声も出た。

 訴訟リスクを個々の自治体に押しつけないために、そして何より、国民全体の健康を守るために、やはり条例ではなく法律で規制するのが望ましい。

 ところが国レベルでは、厚生労働省自民党の対立がいまだ続いていて、目標とされてきた今国会への法案提出は難しい状況になっている。

 厚労省案は、食堂や居酒屋を原則禁煙としつつも、喫煙室を設けることを認め、さらに小規模なバーなどは喫煙可とするものだ。かたや自民党は、業態を問わず、一定の面積以下の飲食店は「喫煙」「分煙」の表示をすれば、たばこを吸えるという案を示している。

 これまでも指摘してきたように、厚労省案も十分とは言い難い。まして自民党案では、従業員をはじめ、望まない煙を吸わされる被害は解消されない。

 自民党の厚生労働部会では、「がんの治療をしながら働く患者は仕事場を選べない」との訴えに対し、「(がん患者は)働かなければいいんだよ」というやじが飛んだ。高額な治療費のため、働かなければならない患者は多数いる。患者の置かれた状況を理解しない発言だ。

 注目すべきは、自民党も都議選の公約に「原則、屋内全面禁煙」の条例制定をかかげたことだ。ひと足先に受動喫煙対策を打ち出した小池百合子知事に対し、争点つぶしに出たとの見方もあるが、まさかそんな都民を欺くようなことはするまい。

 東京でやれて全国でやれない理由はない。都連は党本部に本気で働きかけ、党本部もそれを真摯(しんし)に検討してはどうか。

 きょう31日は世界禁煙デー。禁煙週間が始まった。この機運を逃さず、踏み出すときだ。