2017年6月21日07時50分 朝日 http://digital.asahi.com/articles/ASK6P01C5K6NUBQU01T.html
他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙対策をどう強化するかは、次期国会での焦点となる。塩崎恭久厚生労働相は20日の閣議後会見で、禁煙社会の実現をめざす談話を発表。改めて法案提出への意欲を示したが、自民党との調整は依然難航することが予測され、先行きは不透明だ。
「エビデンス(証拠)に基づく議論が十分できず、結論に至っていない」。塩崎氏は昨年末から進めた党側との調整を振り返り、受動喫煙がなければ年間1万5千人は亡くならずに済むことや、分煙は受動喫煙被害の防止効果が乏しいことを列挙。「妥協することはない」と禁煙の重要性を改めて強調した。
■厚労相 法案提出に意欲
2010年以降の五輪開催国では、屋内は罰則付きの受動喫煙対策が講じられてきた。塩崎氏は「日本で初めて伝統を破ることをどう考えるのか」と述べ、2020年の東京五輪・パラリンピックに間に合うよう議論を加速させる考えを示した。
しかし、政府・与党間の調整はこじれにこじれ、法案提出の見通しはたっていない。
通常国会中では、最後の協議となった先月24日の塩崎氏と自民党の茂木敏充政調会長によるトップ会談。塩崎氏は数年間の経過措置として、小規模な居酒屋などでの喫煙や分煙を認める案を示した。激変緩和策で党側に配慮したが、数年後に求めるのは「原則禁煙」だった。
対する茂木氏。客席100平方メートル以下を想定した一定規模以下の店では「喫煙」などの表示をすれば喫煙できるという党の姿勢を堅持しつつ、数年後に法案を見直す案を示した。厚労省が求める「原則禁煙」に改める余地を残す形だったが、塩崎氏は拒否。「最終的に原則屋内禁煙になる確約がない」と訴え、2時間にわたる協議は決裂した。
■「まとめる気あるのか」怒号も
協議が難航したのは、飲食店での「原則禁煙」VS.「原則分煙」という政策的な対立だけではなく、感情的なもつれもあった。
もともと自民も一枚岩ではない。禁煙推進派の議員がいれば、たばこ生産農家らへの配慮から法案は不要とする議員もいる。そこで前厚労相の田村憲久政調会長代理らが調整して党側の案を一本化。原則禁煙に慎重な議員らに配慮した案を5月に塩崎氏に提示した。妥協しない塩崎氏に田村氏が「まとめる気があるのか」と怒鳴り、資料を投げつけたこともあった。
主張を変えない塩崎氏は協議中の今月1日も厚労省の担当職員を集めて「党に理解を求める。ダメなら(受動喫煙対策の法案化は)お断りするつもりだ」と訴えていた。
受動喫煙対策は安倍晋三首相も1月の施政方針演説で「徹底を進める」と表明していたが、首相官邸は最後まで調整に乗り出さなかった。閣僚経験者の一人は見通しをこう語る。「塩崎氏の心掛けが変わるか、ポストが変わるか。でないと法案はまとまらない」
閣議後会見で、受動喫煙防止対策の徹底に関する談話を発表する塩崎恭久厚生労働相=東京・霞が関の厚労省