受動喫煙対策、初の罰則 法改正案、閣議決定 原案後退、根強い反発

2018年3月10日05時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/DA3S13395834.html 

 

 政府は9日、受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を閣議決定し、国会に提出した。喫煙者や施設管理者に受動喫煙防止を義務づけ、初の罰則付きの対策となる。ただ、規制は昨年の案より後退した。今国会での成立と東京五輪パラリンピック前の2020年4月の全面施行を目指す。

 罰則は、都道府県などが指導や勧告、命令をしても改善されない場合に適用する。設備基準を満たさない喫煙室の使用などは施設管理者に最大50万円、禁煙場所でたばこを吸った人には最大30万円の過料を科す。

 法改正案では、医療機関や学校、行政機関は敷地内禁煙とするが、屋外の喫煙所設置は認める。飲食店は原則屋内禁煙(喫煙専用室は設置可)とするが、客席面積100平方メートル以下で、個人経営か資本金5千万円以下の中小企業が経営する既存店では、「喫煙」「分煙」などの表示をすれば喫煙を認める。

 ただ、昨年3月に厚生労働省が公表した30平方メートル以下のバーやスナック以外は原則屋内禁煙とする案からは大幅に後退した。飲食店全体の55%は喫煙可能になると推計されている。医療関係者や患者団体からの反発は根強く、与党の一部や野党にも反対意見があり、国会審議に影響しそうだ。

 一方で、新規店は原則屋内禁煙とする。5年で3割強の店が入れ替わるといい、厚労省は徐々に喫煙店が減ると予想している。加藤勝信厚労相はこの日の閣議後会見で「受動喫煙対策が段階的かつ着実に進んでいく実効性のある内容だと考えている」と強調した。

 国際医療福祉大の斎藤照代准教授(公衆衛生看護学)は「働く場所によって命と健康が守られる人と、そうでない人がうまれる『差別化』法案だ。働く人を守る視点が欠けている」と指摘した。一方で、神奈川県の条例見直しの検討会で座長を務めた玉巻弘光・東海大名誉教授(行政法)は「規制推進派と反対派両者に不満の残る法案だが、成立すれば社会状況は大きく変化するだろう。小さな一歩とうつるかもしれないが、大きな一歩になりうる」と話した。

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