2018年5月26日05時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/DA3S13511651.html?iref=pc_ss_date
政府は、健康増進法改正案を国会に提出し、成立・施行を目指している。その下での受動喫煙対策は、飲食店やたばこ関連業界の支持基盤を気にする自民党の反発により、当初案より大幅に後退してしまった。原則屋内禁煙とするものの、客席面積100平方メートル以下の飲食店は対象外とされており、全国にある既存の飲食店の55%で喫煙が可能となる。明らかに国際的にみて評価に値しない。
これまで条例化を見送ってきた東京都は4月、従業員がいる飲食店は原則屋内禁煙にする罰則付きの受動喫煙防止条例案を打ち出した。6月開会の都議会に提出し、2020年に全面施行を目指すとしている。この結果、都内飲食店の84%が規制対象になる見通しだという。国に対する地方自治体の「反抗」は大歓迎である。
厚生労働省研究班の推計によると、わが国で受動喫煙が原因で亡くなる人は年間約1万5千人にのぼるという。このような有害な喫煙をなぜ社会的に寛大に容認しているのか。業界や喫煙者の権利が、受動喫煙の被害者より明らかに優先されているという日本の特殊性が浮かび上がってこよう。
私は屋内全面禁煙こそが、明確で実効性のある受動喫煙対策であり、国の目指すべき目標だと思う。飲食店を禁煙にしても、たばこを嫌がる人や子連れの家族の来店が増え、長期的に売り上げは減少しないだろう。列車、航空機、タクシーなどの全面禁煙も最初は大きな抵抗があったが、今ではすっかり定着している。この際、たばこ税の負担を罰則的な水準まで引き上げることも一考に値する。税収は減るかもしれないが、逆にたばこを起因とする医療費が大幅に削減されよう。(安曇野)