2018年6月13日17時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASL6F458VL6FUBQU00B.html
東京都が12日の都議会に提出した受動喫煙防止条例案は、健康被害を受けやすい子どもや、勤務環境を選びにくい従業員らをたばこの煙から守ることに重点を置いた。都議会厚生委員会はこの日、条例案について意見を聞く参考人の招致を決定。27日の本会議で採決する見通しだ。
受動喫煙対策は、小池氏肝いりの政策の一つ。今年4月に骨子案を発表し、条例案づくりを進めてきた。
条例案でとくに厳しく規制するのは、子どもが出入りする施設だ。幼稚園や保育所、小中学校、高校は敷地内を完全禁煙とし、屋内はもちろん、屋外でも喫煙場所の設置を認めない。病院や役所などの行政機関も屋内は完全禁煙としているが、屋外に喫煙場所を設置することは認めている。
オフィスや老人福祉施設、運動施設は「原則屋内禁煙」と規定する。建物内は基本的にたばこを吸えないが、煙を遮断する喫煙専用室を設ければ、その中でだけ喫煙可能だ。従業員を雇っている飲食店も同様に「原則屋内禁煙」としたのも特徴で、対象は推計で都内の84%に上り、面積を基準に規制を定めている国の法改正案と比べて規制対象は広くなる。違反者には罰則(5万円以下の過料)もあり、各施設は禁煙にするか、喫煙専用室の設置を求められることになる。
一方で、喫煙を認めるケースもある。ホテルや旅館の客室は「喫煙」か「禁煙」かのいずれかを選択できる。個人の自宅内も喫煙可だ。従業員を雇っていない飲食店も喫煙できるが、その場合は子どもの出入りは禁止しなければならない。
さらに、「喫煙場所を提供することを主目的とする施設」も喫煙を認める。都によると、シガーバーやたばこ販売店を想定しているが、具体的にどのような施設を対象とするのかは今後、規則で定めるという。加熱式たばこについても、健康被害が明らかになるまで罰則は適用せず、専用の喫煙室での飲食も認めるなど、紙巻きたばこと比べて規制を緩和している。
条例案が成立すれば来年9月には、学校や行政機関で敷地内禁煙を実施し、20年4月からは罰則を含めて全面施行される。
厚生労働省によると、受動喫煙による死者は年間約1万5千人で、受動喫煙で余計にかかる医療費は年間約3200億円に上ると推計されている。飲食業界からは反発の声が上がっているが、小池氏は12日の都議会で「誰もが快適に過ごせる社会を、未来へと受け渡したい」と力を込めた。