国会内や中央省庁の敷地内 進まぬ禁煙対策

2018年6月25日11時00分  朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASL6S763LL6SUBQU00N.html

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 国会と東京都議会で、受動喫煙対策を定めた国の法改正案と都条例案の議論が進んでいる。ともに今会期中に成立する公算が大きく、法改正案の議論の舞台である国会内や中央省庁の敷地内も規制対象になる。現時点では率先して対策を取っているとは言えない状況で、今後、対応を迫られそうだ。

  6月中旬の昼過ぎ、東京・永田町の国会議事堂内。衆院本会議の開会10分前、予鈴が鳴り響くなか、本会議場入り口脇の喫煙所に議員らが次々と入っていく。7、8人が入ればいっぱいに。国会内には外部と壁で完全に仕切られた喫煙所が多いが、この喫煙所は壁の一部が空いており、煙を吸引する機器があるものの、煙が漏れる恐れがある。

 衆参それぞれの広報担当によると、国会内には、議事堂や、各議員の事務室がある「議員会館」など計80超の喫煙所がある。一方、政党ごとに議員が集まる各党の「控室」はそれぞれの党の裁量に委ねられ、議員会館の事務室内も各自の判断で喫煙できる。喫煙する議員の秘書だった30代の女性は「事務室で窓をこっそり開けたりしていたが、苦痛だった」と打ち明ける。

 国の健康増進法改正案や都の受動喫煙防止条例案が今会期中に成立すれば、国会は2020年4月から、オフィスビルと同じ扱いで「原則屋内禁煙」(屋内に喫煙専用室の設置可)になる。厚生労働省などによると、喫煙専用室は煙が漏れない構造にする必要があり、現在の国会内の一部喫煙所は撤去か設備の更新を求められる可能性がある。議員会館の事務室内は喫煙が禁止される。違反者には罰則が適用される予定だ。

 衆参の各広報は今後の喫煙所のあり方について、現段階では決まっていないとしている。まだ正確に規制の内容を認識していない議員もおり、議員会館事務室で喫煙しているという議員は「個室であれば、これからも吸えるのではないか」と話した。

受動喫煙防止の対応、中央省庁で温度差

 14の中央省庁では、敷地内禁煙となっているのは4省庁のみ。他には屋内喫煙所がある。

 その一つの文部科学省。午後1時前、喫煙所に職員が駆け込む。「午後からまた働くぞというスイッチになる」。一服を終えた男性職員(36)はそう話した。

 文科省は19カ所ある喫煙所を7月に6カ所に減らす予定で、今後は屋外喫煙所の設置も検討するという。別の40代男性職員は「喫煙者にはつらい世の中。外に行くのも面倒だから禁煙も考えないと」と漏らした。

 法改正後は、中央省庁など行政機関は敷地内禁煙となり喫煙所は屋外にしか設置できない。現状でこれをクリアするのは健康増進法を所管する厚労省外務省など4省庁。法改正されると、来夏ごろまでに対策をせねばならない。だが対応には温度差がみられる。

 「外務省の中でモクモクと煙が充満するのはよくない」。河野太郎外相は4月下旬、省の建物内を完全禁煙にする方針を示し、5月の大型連休明けに6カ所の喫煙所を撤廃。屋外に喫煙スペースを設けた。

 「20年に向け喫煙所を順次撤廃していきたい」とするのは総務省。76カ所と最も多くの喫煙所がある防衛省は、「法案の趣旨に沿って対応したい」。数が多い理由に東京・市谷の約24万平方メートルの広大な敷地に主要な庁舎だけで7棟あり、自衛官ら約1万人が勤務することをあげる。そのほか多くの省庁は「法案の推移を見守りたい」などと回答するにとどまる。

 人事院は03年、庁舎内では少なくとも空間分煙を確保できる具体策をとり、可能な範囲で全面禁煙に向けて改善に努めるとする指針を出した。朝日新聞の今年5月の調査では、議会に喫煙所があるところを含むものの、都道府県の約8割にあたる38道府県は庁舎内を完全禁煙にしていた。

 禁煙推進学術ネットワークの藤原久義理事長は「分煙では受動喫煙は防げない。中央省庁や国会で対応が遅れているのは信じられない。受動喫煙対策の見本となるべき場所のはずだ」と話す。

屋内喫煙所の数

内閣府   6

復興庁     0

総務省   13

法務省   1

外務省   0

財務省   16

文部科学省 19

厚生労働省 0

農林水産省 2

経済産業省 0

国土交通省 15

環境省   0

防衛省   76

警察庁   5

※2018年6月現在。復興庁が入る庁舎には、共用スペースに屋内喫煙所がある