全席禁煙パチンコ店じわり 「たばこ臭い」イメージ払拭

2018年7月9日20時45分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASL736JFQL73ULBJ013.html?iref=com_gold_list_n 

 

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法案が、今週中に成立する公算が大きい。施行後は、多くの人が利用する施設内は基本的にたばこを吸えなくなる。喫煙客が多いパチンコ店も例外ではない。まだわずかだが、禁煙にする店もじわりと増えている。

 栃木県日光市にある「ダイナム信頼の森栃木日光大沢店」。2010年の開店時から禁煙で、仕切られた部屋だけで喫煙できる。

 常連の50代の主婦は「たばこの煙がモクモクな従来のイメージとはまったく違い、空気がきれい」と話す。2年前までは家から車で5分の喫煙できる店に通っていたが、「たばこの臭いが髪や服に付くのが嫌だった。今後は煙を気にせず、お店を選べる」。週5日ほど訪れる喫煙者の男性(22)は、約1時間おきに喫煙室に入る。別の店でたばこを吸いながらパチンコをし、近くの客に嫌がられた経験がある。「自分の煙が他人の迷惑になっていないか気にしてしまう。喫煙室で吸うほうが他人を気にせず、気分転換にもなる」と話す。

 ダイナムは全国406店舗のうち26店舗を禁煙とし、喫煙のための部屋を設ける。喫煙できる店に比べて固定客の割合が高く、昨年12月に禁煙とした店舗の客数は、禁煙化の前後でほぼ変わっていないという。喫煙を認めている店舗は、法改正されれば、既存の休憩室を喫煙室に転用するなどして対応する。同社広報は「法改正で一時的に客が離れても、『たばこ臭い』イメージが払拭(ふっしょく)され、若い人や女性客が増えると予想している。従業員の受動喫煙の防止にもなる」としている。

 「たばことパチンコはセット。吸えなくなったらイライラする。禁煙になればもうパチンコには行かないね」。喫煙できる東京都大田区の「マルハン蒲田駅東店」に週3日来店するという男性会社員(56)はパチンコ台の前でたばこの火を消すと、嘆いた。

 改正法が20年4月に全面施行されれば、どのパチンコ店も禁煙になり、喫煙専用室内でだけたばこを吸うことができるようになる。喫煙室を設ける方針という久保田政・店長は「喫煙者の来店は減るかもしれないが、非喫煙者の来店の増加も期待でき、トータルで大きな影響はないと思う。すべての店が禁煙になるので、喫煙客は喫煙室で吸うのに慣れてくれるはず」と話す。

 マルハンの全国321店の大半は喫煙できる。ただし東京と大阪の3店舗は10年以降のオープン時から禁煙。法改正をみすえ、16年12月以降にオープンした10店は、喫煙室を設けるスペースを確保している。

 パチンコ店は全国に約1万店。調査会社ビジョンサーチ社によると、全席または一部エリアを禁煙とするパチンコ店は計249で、全体の約2%にとどまる。法施行後は、パチンコだけでなくマージャン店やカラオケ店、ゲームセンターなども、国が決めた基準を満たす喫煙専用室でしか喫煙できなくなる。(福地慶太郎)

喫煙者が6割、「行かなくなる」は9%

 日本遊技関連事業協会が昨年11~12月、来店客2314人に実施した調査によると、紙巻きたばこを吸う人は49%。加熱式たばこや電子たばこを吸う人は9%。合わせて6割近い。

 日本人の成人喫煙率約20%と比べてかなり高い。

 店内が禁煙化されたと仮定して、来店の頻度を聞くと全体では変わらない50%、回数が減る29%、行かなくなる9%だった。一方で非喫煙者だけでみると変わらない68%、増える21%だった。

 協会は調査結果について、「店内禁煙は、単純な遊技人口の減少だけでなく、稼働への影響も懸念される」とする一方で、「喫煙率が低い10~20代は新たな客になる可能性が高い。ホール内禁煙にもメリットがあると考えられる」としている。ただし風営法規則の改正で2021年までに新ルールに基づいた機器に入れ替えなければならない。喫煙室の設置費用は「大きな負担になる」という。

パチンコ台が並ぶフロアは禁煙のダイナム信頼の森栃木日光大沢店。多くの客が訪れていた=栃木県日光市