道議会新庁舎に喫煙所作る?

2019年7月12日09時17分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/CMTW1907120100004.html?iref=pc_ss_date

 

自民会派方針、他会派から批判

 現在建設中の道議会新庁舎をめぐり、論争が巻き起こっている。最大会派の自民党が、もともと計画になかった「喫煙所」を議員控室に設置する方針を決めたためだ。他の会派は「道民の模範となるべき議会は、完全禁煙にするべきだ」と批判。医師や市民団体も「時代錯誤も甚だしい」と反発する。

 受動喫煙の防止をめざす改正健康増進法は7月1日、一部施行され、全国の学校や病院、行政機関の敷地内が原則禁煙となった。

 法制定のきっかけは2020年の東京五輪・パラリンピックだ。国際オリンピック委員会(IOC)は1988年から選手村や競技会場を禁煙にし、「たばこのないオリンピック」の実現を目指しており、東京五輪に向けて、日本政府は対応を迫られていた。札幌市は2030年冬季五輪の誘致を目指している。

 道議会新庁舎は来年1月に完成、同6月から使われる。道庁の屋内はすでに完全禁煙となっているが、議事機関である道議会は行政機関ではないため、法律上、建物内に喫煙室を作ることが認められている。

 現在の庁舎は、一部会派の議員控室や傍聴者の待合所などに3つの喫煙所がある。ただ、決められた場所以外でタバコを吸う議員もおり、傍聴に訪れる道民や道職員らの受動喫煙が問題となっていた。現段階の新庁舎の計画では喫煙室の設置は予定されていない。

 しかし、最大会派の自民党・道民会議は今月1日の議員総会で、新庁舎に喫煙所を設けることを決めた。

 出席者によると、佐々木俊雄議員会長が「きちんと喫煙所を設けて分煙をしっかりやることが大事だ」と喫煙所の設置を提案した。異論も出たが、佐々木会長は「法律で認められていることだ」と押し切った。53人が所属する自民会派で、喫煙者は3~4割という。

 旧民主党系の民主・道民連合も一時は喫煙所の設置を検討していたが、市民からの批判などを受け、「白紙」に戻した。これからあらためて議論をするという。

 ほかの会派は、喫煙所の設置には否定的だ。

 公明は、新庁舎は全面禁煙にすべきという立場。喫煙者の議員もいるが「全面禁煙は当然として了承してくれている」という。

 無所属の議員らでつくる結志会も、喫煙所はいらないという姿勢だ。「法律上問題ないからといって喫煙所を設けるのは、道民の先頭に立つべき議会として問題がある」とする。

 共産も、議員控室だからといって喫煙所を設けるというのは論外だと批判。「分煙のための対策費用を誰が負担するというのか」と疑問を投げかける。

公開質問状・住民監査請求も

 こうした道議会の動きに、住民や経済界、専門家から批判の声があがる。

 道内の経営者らで作る市民団体「北海道の未来を拓く会」は6月、知事・正副議長・各会派に対して「公開質問状」を出した。

 新藤大次郎会長は「道議会は、道議のためにあるのではなく、道民の施設だ」と主張。不特定多数の道民が出入りする道議会で喫煙を認めるのは「議員特権的なおごりだ」と批判した。鈴木直道知事に対しても「夕張市では議員も含め完全禁煙を実現したのに、なぜ道庁ではできないのか」と「奮起」を呼び掛ける。

 日本禁煙学会と日本禁煙推進医師歯科医師連盟は6月、議長と各会派に「施設内完全禁煙」を求める要望書を出した。議会棟や裁判所など、法律上分煙が認められる施設でも、完全禁煙が進む他都府県の例を挙げ、「喫煙室を設置する方向になれば、税金の無駄遣いとして、道民だけでなく全国から批判がわき起こる」と警告した。

 今月10日には、内科医で日本禁煙学会の松崎道幸理事・道支部長が、道に「住民監査請求」を行った。喫煙室の設置には約1千万円、維持費も年間約100万円かかるという独自試算を示して「道財政にも損失をもたらす」とし、「受動喫煙によって道民の健康増進が損なわれ、道議会の権威をおとしめる」と訴えた。鈴木知事にも「完全喫煙を主導してほしい」と求めている。

 道監査委員事務局はこの請求を受理するかどうかを検討している。地方自治法によると、住民監査請求があった場合、行政側が追加資料の提出を要求した場合の期間などを除き、60日以内に監査結果を公表することになっている。

道議会新庁舎の「喫煙所」設置に対する各会派の考え方

自民  議員控室に設置

民主  未定(これから再検討)

結志会 設置しない

公明  設置しない

共産  設置しない