「3密」で次々消える喫煙所 法律も施行…禁煙する?


 

2020年3月31日 17時30分  朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASN304DKRN30TIPE002.html?

 

 望まない受動喫煙をなくすための改正健康増進法が4月1日に全面施行され、飲食店も含めて屋内は原則禁煙となる。小規模店に限り当面は喫煙できるが、独自に禁煙に踏み切る店も。新型コロナウイルス対策として喫煙室を閉鎖する動きも出ており、専門家は「これを機に禁煙しては」と呼びかける。

 病院や大学、行政機関は昨年7月から先行して敷地内が原則禁煙となっている。さらに今回の改正法施行で、飲食店のほか、オフィス、工場など多くの人が利用する施設は屋内は原則禁煙になる。店内に喫煙専用ブースを設置するのは構わないが、客席面積が100平方メートルを超える飲食店では、従来の喫煙席のように喫煙しながらの飲食は原則できなくなる。加熱式たばこ専用の喫煙席があれば、飲食が可能だ。

 喫煙ブースがある飲食店は、入り口に標識を掲示する必要があり、標識を出さずに喫煙させるなどの法令違反を繰り返せば罰則を科せる。福岡市は飲食店からの問い合わせや、ルールを守らない店への苦情を受け付けるコールセンターを設置した。

 厚生労働省の担当者は「受動喫煙を望まない利用者が標識の有無で店を選べるようになる」と話す。

 ファミリーレストランチェーンのジョイフル(大分市)は、全国762の店舗を4月1日から全席禁煙にする。喫煙ブースを設置するのは2%にあたる19店だけで、今月17日のメニュー改定では、子ども向けの料理やデザートを強化した。担当者は「禁煙化で客足に影響が出る可能性はあるが、女性や家族向けのメニューに力を入れていきたい」と話す。

 北九州小倉北区和食店「たまの井はん」は、客席面積が約30平方メートルなので当面は喫煙可とすることもできるが、近くの本店「玉乃井」(約140平方メートル)とともに1日から全面禁煙に切り替える。オーナーの島家清さん(59)は「料理を楽しみに来られる方がほとんどで、子ども連れも多い。お客さんは理解してくださると思う」。

 喫煙者にとって肩身が狭くなるなか、追い打ちをかけるのが、新型コロナウイルスの流行だ。

 政府の専門家会議は感染拡大防止策として、「手の届く距離に多くの人がいる」「換気の悪い密閉空間」「近距離での会話や発声」といった条件が重なる場面をつくらないよう呼びかけている。屋内喫煙所はこうした悪条件を満たす恐れがあり、一時的に閉鎖される動きが相次いでいる。

 総合スーパー66店舗を運営するイオン九州(福岡市)は、煙の漏出防止など改正法にあわせて喫煙所を改修してきたが、「閉鎖空間での新型コロナ感染防止のため」として3月から屋内喫煙所を閉鎖した。

 福岡市中央区の商業施設「MARK IS(マークイズ)福岡ももち」も、屋内喫煙所を閉鎖している。

 福岡市城南区の大学生の女性(21)は喫煙者だが、よく通う福岡・天神のカフェの喫煙席は法施行に先駆けて3月初旬に廃止になった。店を出て近くのビルの喫煙所を使うしかないが、ここも閉鎖されるかもしれない。「正直不便ですが、これまで以上に周りの人に迷惑をかけないようにします」

 受動喫煙対策に詳しい産業医科大学の大和浩教授は「喫煙所では三つの条件が重なるうえ、マスクを外し、洗っていない指でたばこをくわえる。経口感染する恐れがある」と指摘する。「喫煙者ほど重症化リスクが高いとの報告もある。対策を万全にするためには喫煙所の閉鎖はもちろん、喫煙をやめるべきだ」