心理的依存に効果、日本初のニコチン依存症治療用アプリが保険適用--12月1日から処方
20配信
cnet.japan
https://news.yahoo.co.jp/articles/4b3b8d4b64a9b4607bcbef52e6d437c92183f052?page=1
ヘルステックベンチャーのCureAppが提供する日本初のニコチン依存症治療用アプリ「CureApp
SC
ニコチン依存症治療用アプリ及びCOチェッカー」(以下、CureApp
SC)が中央社会保険医療協議会(中医協)の了承を得て、12月1日から保険収載(保険適用)されることが発表された。
CureApp
SCは8月に薬事承認された。医薬品や手術などを用いて行う従来の治療とは違い、ニコチン依存症の心理的依存にアプローチして治療する特徴がある。個別化されたメッセージや動画を通じて患者の考え方や行動を変容させ、正しい生活習慣に導く。アプリに加えてポータブルCO(一酸化炭素)チェッカー、医師が利用する医師アプリを連携させることで、禁煙治療をサポートする。
CureAppは2014年に設立された、治療用アプリに特化した医療ベンチャーで、呼吸器内科医の佐竹晃太氏が代表取締役社長を務める。佐竹氏は「現在はニコチン依存症のほか高血圧、NASHと呼ばれる非アルコール性脂肪肝炎、アルコール健康被害という4つの疾患のパイプラインで開発している」と語る。
「高血圧は既にフェーズ3の治験まで進んでおり、NASHは8施設での臨床試験を実施している。アルコール減酒支援もフィジビリティスタディ(実行可能性調査)を行っているところだ。『行動変容』という1つのキーワードの価値を出す治療用アプリを作り出そうとしている」(佐竹氏)
COチェッカーで計測、スマホアプリで禁煙を支援
CureAppが提供する治療用アプリは、医薬品による「薬物療法」や、手術などによる「外科療法」とは違い、考えや生活習慣を改善して行動変容を引き起こすのが治療効果だと佐竹氏は語る。
「診察時には患者に寄り添って深く介入できるが、診察が終わって患者が外に出た時間、在宅時間などには直接介入できないのが現在の診療現場の課題だ。治療用アプリでは在宅時に直接ソフトウエアで患者に介入できるのが大きな価値で、安い研究開発費用で作れる割に効果が高い。費用対効果が極めて高いだけでなく、医療費適正化や医療格差の改善にも寄与できる。診療を対面ではなくてオンラインで行う『オンライン診療』とは違い、ソフトウエア自身が治療介入するというのが特色だ」(佐竹氏)
CureApp
SCの保険点数は在宅療養指導管理料の「導入期加算」として140点(1400円)に加えて、「在宅療養指導管理材料加算」として2400点(2万4000円)、併せて2万5400円となる(保険適用時に患者が支払う金額はその2~3割である5080円~7620円)。禁煙治療補助システムという位置付けとなっている。
「禁煙治療においては、補助薬や禁煙指導など、3カ月間で6万4000円ほどの医療費がかかる。その医療費に加えて2万5400円のうちの2割か3割の負担分がかかるというイメージだ。スマートフォンアプリはAppStoreやGoogle Playからダウンロードするが、ダウンロード後に医師から処方された『処方コード』と呼ばれるパスワードを入れてアクティベートすることで使えるようになる」(佐竹氏)
アプリには「チャット」「学ぶ」「実践する」「記録する」といったメニューが並ぶ。患者は毎日COチェッカーによって呼気中の一酸化炭素濃度を計測し、「学ぶ」メニューから禁煙成功につながる方法を学習したり、「実践する」メニューから環境改善や行動パターン変更につながる方法を実践したりしていく。
「入力した数値や行動などによって、アルゴリズムに基づいて励ましのメッセージを出したり、依存症の理解や行動療法についての動画を自動で配信したり、実際に禁煙が続けられているかどうかを管理したりする。依存症を退治する上で必要な行動療法と呼ばれる心理療法をアプリがしっかりフォローするところが重要なポイントだ。禁煙を続けていると呼気中の一酸化炭素濃度の数値がよくなっていくので、吐いた息がクリーンになることを実感することで禁煙を続ける動機付けにもつながる」(佐竹氏)
従来の禁煙外来は3カ月間の通院と2~3カ月間にわたる投薬というのが基本だったが、「3カ月を超えた半年間で治療を行うというのは本品からできた新しい治療スタイルだ」と佐竹氏は語る。
「もっと長い期間やるべきだという声は臨床側から上がっていたが、保険算定上は最大3カ月となっている状況だった。その3カ月間も、従来は医師が5回しか介入することができなかった。最初の3カ月間においても、在宅においてフォローすることで治療効果を高めることにつながる」(佐竹氏)
全国に約1万7000ある禁煙外来の3割に導入目指す
CureApp
SCの保険算定開始日となる12月1日から医療機関での処方が開始される。
「現在既に数多くの医療機関から導入したいという問い合わせをいただいている。病院のPCにシステムを導入する必要があるため、数十の医療機関で手続きを進めているところだ。今後の展望としては、約1万7000ある禁煙外来のうち3割に導入したいというのが直近の目標だ。もちろん企業としては3割がゴールではない。禁煙外来を持つすべての医療機関への導入を目指したい」(佐竹氏)
一般患者が利用する場合にはスマートフォンアプリ(Android/iOS対応)が必要になるが、医療機関が導入する上ではWebアプリである「医師アプリ」に接続できる環境(インターネットに接続できるパソコンとWebブラウザー)が必要になる。
「クリニックではインターネットに接続したPCで電子カルテシステムを利用している場合も多いが、大きい病院だとイントラの電子カルテシステムを利用している場合が多い。その場合は電子カルテシステムとは別に、事務用PCでもいいが、インターネットにつながったPCが必要になる」(佐竹氏)
これから普及させる上で、患者側、医療機関側ともにハードウエア環境面でのハードルは決して高くはない。
「米国では臨床の現場で治療用アプリを処方するという新しい診療が徐々に始まって浸透しつつあるが、日本ではこれからだ。アプリを処方して治療するという新しい診療の常識を作るところが大きなハードルになると考えている。一方で薬事承認、保険適用に関して国内30以上の学会から治療用アプリに関するステートメントをいただいているので、その観点からは新しい治療スタンダードを作るための下地というか、ニーズは十分にあると思っている」(佐竹氏)
導入する医療機関を増やすため、社内にマーケティングチームやセールスチームの人員をそろえているという。
「製薬企業のように対面で病院を訪問するというより、IT企業としてテレビ電話などを通じたオンラインでのセールスや、SNSを中心としたWebマーケティングなどの施策をやる予定だ。それに加えて私自身が呼吸器内科医なので、学会への登壇や論文ベースでの活動など、アカデミックな活動も重要なポイントになる。その2つを掛け合わせるのが弊社の特徴だ」(佐竹氏)
“健康経営”の一環として健康保険組合からも注目される
禁煙は一般患者一人ひとりだけでなく、多くの従業員を抱える企業の従業員の健康増進を図る「健康経営」にとっても重要になる。
「健康保険組合の方々からも問い合わせをいただいており、かなりニーズは強い。全国に数百ある健康保険組合の2割以上がオンラインの禁煙外来を使って禁煙治療を行っている。しかしオンラインの禁煙外来の場合は自己申告で禁煙の成功を判断するしかなく、客観的に禁煙が成功したかどうかを見る指標がない。弊社の場合はCOチェッカー込みのアプリで承認されたので、COチェッカーを使うことで被保険者が本当にタバコをやめたかどうかを客観的な指標で評価できる。お金を払う健康保険組合としてはすごく助かるという声をいただいている」(佐竹氏)
企業の健康保険組合の場合、半年を経過しても従業員の禁煙をサポートしたいというニーズもあることだろう。
「あくまでも半年間での薬事承認で、それ以上使うと薬事法違反になってしまうため使えないが、そういう声はいただいている。医療機器としてのアプリとは別に、禁煙アプリとカウンセリング、OTC医薬品(薬局やドラッグストアで購入できる医薬品)のニコチンパッチを使った卒煙プログラムを提供している。こちらも半年間のプログラムだが、追加で最長1年間までフォローしている」と説明した。
CureApp
SCから卒煙プログラムに移行することについて、「まだ準備はしていないが、検討の余地はある。健保としてはお金を払ってもアウトカム(成果)が見えないのが課題。オンラインの禁煙外来で使う時にはそういったニーズをしっかりとらえてやっていきたい」と展望を語った。
心理的依存に効果、日本初のニコチン依存症治療用アプリが保険適用--12月1日から処方
20配信 cnet.japan https://news.yahoo.co.jp/articles/4b3b8d4b64a9b4607bcbef52e6d437c92183f052?page=1
ヘルステックベンチャーのCureAppが提供する日本初のニコチン依存症治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療用アプリ及びCOチェッカー」(以下、CureApp SC)が中央社会保険医療協議会(中医協)の了承を得て、12月1日から保険収載(保険適用)されることが発表された。
CureApp SCは8月に薬事承認された。医薬品や手術などを用いて行う従来の治療とは違い、ニコチン依存症の心理的依存にアプローチして治療する特徴がある。個別化されたメッセージや動画を通じて患者の考え方や行動を変容させ、正しい生活習慣に導く。アプリに加えてポータブルCO(一酸化炭素)チェッカー、医師が利用する医師アプリを連携させることで、禁煙治療をサポートする。
CureAppは2014年に設立された、治療用アプリに特化した医療ベンチャーで、呼吸器内科医の佐竹晃太氏が代表取締役社長を務める。佐竹氏は「現在はニコチン依存症のほか高血圧、NASHと呼ばれる非アルコール性脂肪肝炎、アルコール健康被害という4つの疾患のパイプラインで開発している」と語る。
「高血圧は既にフェーズ3の治験まで進んでおり、NASHは8施設での臨床試験を実施している。アルコール減酒支援もフィジビリティスタディ(実行可能性調査)を行っているところだ。『行動変容』という1つのキーワードの価値を出す治療用アプリを作り出そうとしている」(佐竹氏)
COチェッカーで計測、スマホアプリで禁煙を支援
CureAppが提供する治療用アプリは、医薬品による「薬物療法」や、手術などによる「外科療法」とは違い、考えや生活習慣を改善して行動変容を引き起こすのが治療効果だと佐竹氏は語る。
「診察時には患者に寄り添って深く介入できるが、診察が終わって患者が外に出た時間、在宅時間などには直接介入できないのが現在の診療現場の課題だ。治療用アプリでは在宅時に直接ソフトウエアで患者に介入できるのが大きな価値で、安い研究開発費用で作れる割に効果が高い。費用対効果が極めて高いだけでなく、医療費適正化や医療格差の改善にも寄与できる。診療を対面ではなくてオンラインで行う『オンライン診療』とは違い、ソフトウエア自身が治療介入するというのが特色だ」(佐竹氏)
CureApp SCの保険点数は在宅療養指導管理料の「導入期加算」として140点(1400円)に加えて、「在宅療養指導管理材料加算」として2400点(2万4000円)、併せて2万5400円となる(保険適用時に患者が支払う金額はその2~3割である5080円~7620円)。禁煙治療補助システムという位置付けとなっている。
「禁煙治療においては、補助薬や禁煙指導など、3カ月間で6万4000円ほどの医療費がかかる。その医療費に加えて2万5400円のうちの2割か3割の負担分がかかるというイメージだ。スマートフォンアプリはAppStoreやGoogle Playからダウンロードするが、ダウンロード後に医師から処方された『処方コード』と呼ばれるパスワードを入れてアクティベートすることで使えるようになる」(佐竹氏)
アプリには「チャット」「学ぶ」「実践する」「記録する」といったメニューが並ぶ。患者は毎日COチェッカーによって呼気中の一酸化炭素濃度を計測し、「学ぶ」メニューから禁煙成功につながる方法を学習したり、「実践する」メニューから環境改善や行動パターン変更につながる方法を実践したりしていく。
「入力した数値や行動などによって、アルゴリズムに基づいて励ましのメッセージを出したり、依存症の理解や行動療法についての動画を自動で配信したり、実際に禁煙が続けられているかどうかを管理したりする。依存症を退治する上で必要な行動療法と呼ばれる心理療法をアプリがしっかりフォローするところが重要なポイントだ。禁煙を続けていると呼気中の一酸化炭素濃度の数値がよくなっていくので、吐いた息がクリーンになることを実感することで禁煙を続ける動機付けにもつながる」(佐竹氏)
従来の禁煙外来は3カ月間の通院と2~3カ月間にわたる投薬というのが基本だったが、「3カ月を超えた半年間で治療を行うというのは本品からできた新しい治療スタイルだ」と佐竹氏は語る。
「もっと長い期間やるべきだという声は臨床側から上がっていたが、保険算定上は最大3カ月となっている状況だった。その3カ月間も、従来は医師が5回しか介入することができなかった。最初の3カ月間においても、在宅においてフォローすることで治療効果を高めることにつながる」(佐竹氏)
全国に約1万7000ある禁煙外来の3割に導入目指す
CureApp SCの保険算定開始日となる12月1日から医療機関での処方が開始される。
「現在既に数多くの医療機関から導入したいという問い合わせをいただいている。病院のPCにシステムを導入する必要があるため、数十の医療機関で手続きを進めているところだ。今後の展望としては、約1万7000ある禁煙外来のうち3割に導入したいというのが直近の目標だ。もちろん企業としては3割がゴールではない。禁煙外来を持つすべての医療機関への導入を目指したい」(佐竹氏)
一般患者が利用する場合にはスマートフォンアプリ(Android/iOS対応)が必要になるが、医療機関が導入する上ではWebアプリである「医師アプリ」に接続できる環境(インターネットに接続できるパソコンとWebブラウザー)が必要になる。
「クリニックではインターネットに接続したPCで電子カルテシステムを利用している場合も多いが、大きい病院だとイントラの電子カルテシステムを利用している場合が多い。その場合は電子カルテシステムとは別に、事務用PCでもいいが、インターネットにつながったPCが必要になる」(佐竹氏)
これから普及させる上で、患者側、医療機関側ともにハードウエア環境面でのハードルは決して高くはない。
「米国では臨床の現場で治療用アプリを処方するという新しい診療が徐々に始まって浸透しつつあるが、日本ではこれからだ。アプリを処方して治療するという新しい診療の常識を作るところが大きなハードルになると考えている。一方で薬事承認、保険適用に関して国内30以上の学会から治療用アプリに関するステートメントをいただいているので、その観点からは新しい治療スタンダードを作るための下地というか、ニーズは十分にあると思っている」(佐竹氏)
導入する医療機関を増やすため、社内にマーケティングチームやセールスチームの人員をそろえているという。
「製薬企業のように対面で病院を訪問するというより、IT企業としてテレビ電話などを通じたオンラインでのセールスや、SNSを中心としたWebマーケティングなどの施策をやる予定だ。それに加えて私自身が呼吸器内科医なので、学会への登壇や論文ベースでの活動など、アカデミックな活動も重要なポイントになる。その2つを掛け合わせるのが弊社の特徴だ」(佐竹氏)
“健康経営”の一環として健康保険組合からも注目される
禁煙は一般患者一人ひとりだけでなく、多くの従業員を抱える企業の従業員の健康増進を図る「健康経営」にとっても重要になる。
「健康保険組合の方々からも問い合わせをいただいており、かなりニーズは強い。全国に数百ある健康保険組合の2割以上がオンラインの禁煙外来を使って禁煙治療を行っている。しかしオンラインの禁煙外来の場合は自己申告で禁煙の成功を判断するしかなく、客観的に禁煙が成功したかどうかを見る指標がない。弊社の場合はCOチェッカー込みのアプリで承認されたので、COチェッカーを使うことで被保険者が本当にタバコをやめたかどうかを客観的な指標で評価できる。お金を払う健康保険組合としてはすごく助かるという声をいただいている」(佐竹氏)
企業の健康保険組合の場合、半年を経過しても従業員の禁煙をサポートしたいというニーズもあることだろう。
「あくまでも半年間での薬事承認で、それ以上使うと薬事法違反になってしまうため使えないが、そういう声はいただいている。医療機器としてのアプリとは別に、禁煙アプリとカウンセリング、OTC医薬品(薬局やドラッグストアで購入できる医薬品)のニコチンパッチを使った卒煙プログラムを提供している。こちらも半年間のプログラムだが、追加で最長1年間までフォローしている」と説明した。
CureApp SCから卒煙プログラムに移行することについて、「まだ準備はしていないが、検討の余地はある。健保としてはお金を払ってもアウトカム(成果)が見えないのが課題。オンラインの禁煙外来で使う時にはそういったニーズをしっかりとらえてやっていきたい」と展望を語った。