(街のB級言葉図鑑)喫煙可能店
2020年4月に改正健康増進法が施行され、多くの人が集まる施設は原則として禁煙になりました。これには飲食店も含まれます。
たばこの煙が苦手な私にはありがたい法改正ですが、例外もあります。シガーバーなどは「喫煙目的店」。また、すぐには対応が難しい小規模店は、経過措置として「喫煙可能店」となりました。
街を歩いていると、この〈喫煙可能店〉などの表示をよく見かけるようになりました。店に入ってから、紫煙に悩んだことは何度もありますが、これからは大丈夫かな。
かつては、たばこが吸える店が普通で、禁煙の店は「禁煙店」とわざわざ強調してお客を呼んでいました。今後は、逆に喫煙店のほうに表示義務が生じるのですから、世の中の常識の変化を感じます。
以前から普通にあったものを、新しいものと区別するため、改めて名前をつけ直すことがあります。「レトロニム」と言います。「禁煙可能店」などもレトロニムです。
お店の禁煙についての議論が始まってから、ここまで来るのにとても長い年月がかかりました。関係者のご苦労がしのばれます。(飯間浩明 国語辞典編纂者)