滋賀県大津市園城寺町の三井寺境内にあった喫煙スポットが、昨年12月21日に撤去された。市が設置したが、喫煙スポットの前にあるレストランが新型コロナウイルスの感染防止のために窓を開けたところ、客から煙の苦情が出た。観光客の利用を想定していたが、寺の近くに庁舎がある市の職員も利用していた。
喫煙スポットの灰皿は、市が日本たばこ産業(JT)から寄付を受けた。2009年以降、三井寺やJR大津駅、石山寺など市内9カ所に設置した。人の背丈ほどある「特大」と、高さ1メートルほどの「標準」の2タイプがある。
9カ所のうち市が管理していた7カ所は、苦情が寄せられるようになり、健康増進法の一部改正を機に19年夏までに撤去した。しかし、レストランなどを経営する民間業者が管理している三井寺と、石山観光協会が管理している石山寺の喫煙スポットは存続した。
三井寺には09年6月、境内の駐車場にある「れすとらん風月」前に特大の灰皿が設置された。レストランから離れた土産物店の前にも標準のものが置かれた。両店を経営する風月堂商事が維持、管理してきた。
同商事の小野寺和徳社長(59)によると、新型コロナウイルス対策として換気を徹底するため、昨夏以降にレストランの窓を開け始めた。すると、客から「たばこ臭くて不快だ」「空気の良い所と思っていたのに、たばこの煙で台無し」といった苦情が5、6件寄せられたという。
小野寺社長は「その度に窓を閉め、お客様が帰られたら開けるという対応を取ってきた」。喫煙者が多い時間帯は、平日の午前8時ごろと昼休み、午後5時過ぎだったという。
記者が12月上旬のある日、正午から喫煙スポットを30分間観察したところ、20人が利用した。午後0時25分ごろには、13人が灰皿の周辺を取り囲んだ。談笑している人が多かった。
市の部局名が入ったジャンパーを着た50代の男性は「週に1、2回利用している。けっこう、市役所(の職員)がいるのではないか。(レストランの客に)迷惑がかかるのなら、やめないといけないですね」と話した。
朝日新聞の取材を受け、市人事課は同月9日、職員向けのインターネット掲示板で、三井寺の喫煙スポットで多くの職員が喫煙し、煙の流入で客から苦情の声が上がっているとの情報が寄せられた、と注意を呼びかけた。また、「観光客のために設置されており、職員の利用は控えてほしい」と書き込んだ。
その2日後、再び記者が正午から30分間観察した。利用者はいなかった。
市は16日に小野寺社長と協議し、灰皿の撤去を決めた。小野寺社長は「毎日夕方に灰皿を清掃し、管理が大変だった。コロナがなければ、このようなことにはならなかったと思うが、撤去されて助かっています」と歓迎した。
神崎秀夫・市人事課長は「職員の利用で、れすとらん風月をはじめ、市民や観光客の皆さまにご迷惑をおかけした。職員の勤務時間外の喫煙については、引き続きマナー向上に努めてまいります」とコメントした。
市は残りの喫煙スポットも撤去を検討している。
たばこを吸うために喫煙スポットに集まった人たち=大津市園城寺町