公園のたばこ、気になる受動喫煙 「許して」と喫煙者
2021年6月7日 9時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASP62457KP5TULEI002.html
公園の喫煙所から流れてくるたばこの煙。子どもが多く訪れる場所だけに、受動喫煙が気になる。東京都内では、禁煙を打ち出している自治体もある。たばこを吸える場所が減りつつあるなか、喫煙者にとっては、数少ない「とりで」でもあるが……。
動物園や博物館もあり、多くの人が訪れる上野恩賜(おんし)公園(台東区)。約53万平方メートルの広々とした園内には、三つの喫煙所がある。
そのうちの一つ、京成上野駅に近く交番裏にある入り口付近の喫煙所を、平日のお昼ごろ、訪れた。
入り口を入ってすぐの道の脇に設置された2台の灰皿を中心に、20人ほどが集まっている。周囲についたてなどはない。近くを通るとたばこの煙が鼻をつく。
長男(1)を連れて遊びに来ていた専業主婦の女性(37)は、喫煙所から離れた芝生にシートを敷き食事を取っていた。
「子どもが煙を吸い込む可能性もあるので、公園に喫煙所はない方がいいです」
2週間に一度ほど利用しているが、普段から喫煙所の近くは避けているという。
都立公園の喫煙所、半分以下に
公園での喫煙所の規制はどうなっているのか。
受動喫煙防止などについて定めた健康増進法では、屋外での喫煙について「周囲の状況に配慮」することを求めている。ただ、公園での喫煙を禁止しているわけではない。一方、2020年4月には改正健康増進法が全面施行され、多数の利用者がいる施設、鉄道、飲食店などが原則屋内禁煙となった。屋内での規制が進んだため、公園など屋外の吸える場所に人が集まるようになったという面もある。
上野公園で一服していた会社員の男性(41)は、職場では屋内禁煙になり、吸える場所が減っていると感じているという。「いつもほかの方に迷惑をかけないように決められた場所で吸っています。『どうか許して』という気持ちです」
自治体によっても対応は分かれる。
18年4月に施行された東京都の「子どもを受動喫煙から守る条例」は、喫煙する人に対し、公園などでは「子どもの受動喫煙防止に努めなければならない」と定めているが、禁煙までは求めていない。
都公園課によると、83ある都立公園のうち、代々木公園や小金井公園など、24公園に喫煙所があるという。
子どもの受動喫煙防止をうたう条例との整合性を問うと「子どもが利用するような遊具、広場に近い喫煙所の撤去や集約を続けています」(都公園課)。条例の施行前に比べ、喫煙所は半分以下になったという。
中央区では、区立公園の指定場所でたばこを吸うことができる。
一方、千代田区は02年に生活環境条例を制定し、路上だけでなく、区立公園も禁煙にしている。板橋区では今年4月に受動喫煙を防ぐための改正条例が施行され、区立公園内は禁煙になった。
たばこの健康被害に詳しい大阪国際がんセンターの田淵貴大(たかひろ)・がん対策センター疫学統計部部長補佐は「公園はぜんそくなど呼吸器の病気を持つ子どもも遊びに来る場所。ついたてなどでは受動喫煙の観点からは不十分なので、対策を考える必要があるでしょう」と話す。
都は、全面禁煙を求める声の一方、「吸える場所がなくて困る」といった声も把握している。今後は受動喫煙防止の観点から、喫煙所の撤去や集約を進めていく方針だという。
◆公園の喫煙所、どう思いますか?ご意見をお寄せください。ツイッター@AsahiDkh かメールdkh@asahi.com
まで。
都市公園100選の禁煙状況 https://notobacco.jp/pslaw/cityparkkinen2020.htm
庭園100選の禁煙状況 https://notobacco.jp/pslaw/teienkinen2020.htm