2022年5月31日 10時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASQ5Z5TBGQ5VUTFL00B.html
禁煙を目指している人たちの治療に広く使われてきた飲み薬「チャンピックス」が出荷停止となってまもなく1年になる。発がん性物質が見つかったためで、再開は今年後半以降になる見通しだ。日本禁煙学会の作田学理事長は、チャンピックスの出荷再開を待ち望む一方で、「時間はかかるが、薬なしでも禁煙は可能なので粘り強く挑戦してほしい」と話している。
同学会などによると、たばこをやめるには依存性が高いニコチンを断ち切る必要がある。たばこをやめて2~3日すると、ニコチンが体内から抜けるが、イライラしたりたばこを欲しがったり。気持ちがコントロールできず、また吸ってしまう人が多いという。
市販のニコチンガムを薬局で買うなどして自分の力で試みるという選択肢のほか、禁煙を望む人のために、禁煙外来が全国で1万7千カ所展開されている。外来で処方されてきたのが、米ファイザー社製の「チャンピックス」(一般名バレニクリン)だ。
ファイザー社などによると、チャンピックスは、吐き気や頭痛などの副作用が出る一方で、喫煙時の満足感を少なくしたり、ニコチンが体から抜ける時のストレスを軽くしたりする効果がある。2008年に日本で承認されて以降、多くの外来で処方されていた。だが、発がん性物質が見つかり、21年6月に出荷停止に。薬が出せなくなったために休診に追い込まれた外来もあるという。
チャンピックスのほか、外来で処方される補助薬には貼り薬(ニコチンパッチ)がある。貼り薬は、たばこの代わりに体内にニコチンを一定期間取り入れ、たばこを吸いたいという気持ちを和らげる。しかし、過去の臨床試験では、チャンピックスの方が貼り薬と比べて禁煙が持続する割合が高い結果が出ている。ファイザー社は出荷再開について、各国当局との協議が続いており、「今年後半以降になると想定している」という。
日本禁煙学会によると、現在も全国で2割ほどの禁煙外来が診療を続けている。サポート態勢は整っているとして、自力での禁煙が難しいと感じる人には受診を勧めている。
外来一覧は同学会のウェブサイト(http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic.html)からみることができる。
薬の力を借りずに禁煙を成功させるにはどうすればいいか。
作田理事長によると、禁煙には本人がたばこと向き合い、考えを見つめ直して行動を変えていくことが最も重要だという。
例えば、どんな時にたばこが欲しくなってなぜ吸ってしまうのかを、紙に書いたり誰かと話したりして、行動と感情、考えを振り返る。目標を立て、禁煙に結びつける。
一方、向き合う家族や医師が間違いを指摘したり考えを押しつけたりせず、本人に見つめ直してもらうのが成功の鍵になるという。
「また吸いたい」という気持ちに対しては、たばこの代わりに水を飲むのが有効だ。酒やコーヒーはたばこのお供になることが多く、吸ってしまうリスクが高くなるため、できるだけ控えた方がいいという。
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国内のたばこをめぐる動向
厚生労働省の調査によると、習慣的にたばこを吸う人の割合(喫煙率)は年々下がり、2019年に16・7%(男性27・1%、女性7・6%)となっている。
20年には改正健康増進法が施行され、住宅などを除く全施設が原則屋内禁煙となった。 しかし、一部の自治体では、県議や市議らもかかわって屋外喫煙所の設置を求める動きが出ている。
新型コロナウイルスとの関連では、世界保健機関(WHO)はたばこを吸う人が重症化する可能性が高いとして、声明を発表している。