加熱式たばこに高血圧リスク 「有害性、紙巻きより低いとは言えず」

2024年11月8日 17時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASSC63V8YSC6ULBH005M.html


 

 加熱式のたばこを吸っている人は吸わない人と比べ、高血圧と診断されるリスクが高いとする研究結果を、産業医らでつくるグループが論文発表した。メーカー側は加熱式たばこについて「有害性は紙巻きたばこより大幅に低い」としているが、グループは「高血圧の予防に関して、加熱式は紙巻きよりリスクが低いとは言えない」と結論づけている。

 加熱式たばこは、たばこの葉を燃焼させずに熱し、発生する蒸気を吸う製品。蒸気にはニコチンなどの成分が含まれるが、燃焼に伴う煙が出ないことから、メーカーのフィリップモリスジャパンはサイトで「紙巻きたばこと比べて発生する有害性成分の量は大幅に少なくなります」としている。

 研究は、国内の電気機械メーカーに勤め、高血圧ではない約3万人(男性約8割、平均年齢42.9歳)の健康診断データを用いて実施。たばこを吸う習慣のほか、血圧に関わる食や運動の習慣などについて尋ね、その後を平均2.6年間追跡した。

 追跡期間中、新たに約3700人が「収縮期血圧140以上、拡張期血圧90以上、降圧剤を使用」のいずれかに該当する「高血圧」と診断された。

 解析の結果、たばこを吸ったことがない人が追跡期間中に高血圧と診断されるリスクを1とすると、たばこを吸っていて高血圧と診断されるリスクは紙巻きたばこで1.26、加熱式で1.19と、いずれも吸わない人よりも高かった。

 この解析では、年齢、アルコールや高塩分食品の摂取状況、運動習慣などが結果に影響しないよう統計学的に調整した。割合の数値は加熱式のほうが紙巻きよりも若干小さいが、科学的には意味のある差ではないという。

 また、加熱式、紙巻きのいずれも、1日に吸う本数が多い(11本以上)人のほうが、少ない(1~10本)人よりも高血圧のリスクが高かった。

 加熱式たばこが高血圧をもたらす仕組みはまだよく分かっていないが、マウスの実験で、ニコチンを含む蒸気を吸わせると血圧を調整する機能が低下し、肺や全身の血圧が高まったとする報告がある。

 高血圧は、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中などを招く代表的な要因となる。研究チームの溝上哲也・国立国際医療研究センター部長は「少なくとも血圧への影響に関しては、加熱式の有害性が紙巻きよりも大幅に低いということはなさそうだ。ほかの健康指標についても引き続き調査したい」と話す。

 今回とは調査手法が異なり研究の質は劣るものの、過去の論文で、加熱式たばこを吸っている人は吸わない人に比べて、聴力低下や高血糖などの割合が高いとも指摘されている。

 研究結果は、疫学の国際誌に掲載(https://doi.org/10.1093/ije/dyae114別ウインドウで開きます)された。