ニュージーランド新政権、「たばこ禁止法」撤廃の方針 保健専門家ら批判
2023年11月28日 BBC https://www.bbc.com/japanese/67551243
ニュージーランドで27日、クリス・ラクソン首相による新政権が発足した。減税の代替財源を確保するため、世界で最も進んでいる「たばこ禁止法」を撤廃する方針を示しており、保健専門家らが非難している。
たばこ禁止法は、2009年以降に生まれた人への紙巻きたばこの販売を来年から禁止する。ジャシンダ・アーダーン前政権下で導入された。
ニュージーランドでは、予防可能な死亡の原因のトップが喫煙となっており、若者に喫煙習慣を身につけさせないのが目的。禁止法は、たばこ販売店数の制限や、たばこに含まれるニコチン濃度の低減なども含まれ、毎年5000人の命が救われるとされてきた。
たばこ禁止法は公衆衛生の政策として高く評価される一方で、国内の一部のビジネス団体からの反発も招いた。街角で新聞などを売る小売店経営者らは、政府の補助金があっても収益が失われると批判した。
ラクソン新首相を含む一部の議員らは、禁止法によってたばこの闇市場が生まれると主張してきた。
たばこ禁止法の撤廃には、議会での議決が必要。
ニュージーランドは、2025年までに国民の喫煙率を5%まで下げ、最終的には喫煙を完全になくすことを目指している。同国のデータによると、過去1年間に成人8万人以上が禁煙し、現在の成人の喫煙率は約8%。
保健衛生の専門家らは、突然の転換を強く批判している。
オタゴ大学のリチャード・エドワーズ教授は、「世界をリードする極めて優れた保健政策にとって大きな退行だ」と非難。
「ニュージーランドのほとんどの保健団体は、政府の行為にがく然として、撤回を求めている」、「政府は世論を無視し、大多数の保健専門家、医師、看護師らを明らかに無視している」とBBCに話した。
ニュージーランドの先住民マオリ族の全国的な保健組織は、「すべてのニュージーランド人の健康と福祉に対する非良心的な打撃」だとした。
マオリ族の間では、喫煙率の高さやたばこ関連の病気や健康問題の多さが大きな問題となっており、たばこ禁止法がその改善に寄与すると複数の専門家が期待していた。
たばこ禁止法の撤廃方針は、ニコラ・ウィリス新財務相が25日に発表した。
ニュージーランドでは、先月14日に総選挙があり、ラクソン氏率いる中道右派の国民党が得票率38%で第1党となった。連立による政権発足を目指し、ポピュリスト政党のニュージーランド・ファースト党と、自由至上主義政党のACT党と政策を協議。24日にようやく合意にこぎつけた。
たばこ禁止法については、国民党は選挙戦で触れていなかった。そのため、法律がそのまま維持されると考えていた健康問題の専門家らは、撤廃の方針に衝撃を受けている。選挙戦では、ニュージーランド・ファースト党(投票率6%)だけが、同法の撤廃を主張していた。
国民党所属のウィリス氏は、連立を組む2政党が撤廃に「固執」しているとした。
国民党は当初、中高所得者を対象に減税を実施し、税収減は外国人の不動産所有を認めることで補うとする目玉政策を掲げた。しかし、連立の2政党がこれに反対。そのため、他の財源を探す必要があったと、ウィリス氏は述べた。
ニュージーランドで禁煙拡大に取り組む「アクション・フォー・スモークフリー2025」委員会のロバート・ビーグルホール委員長は、「たばこを吸い続ける人に税収減を補わせるというのは、まったくショッキングな話だ」と現地メディアに話した。
(英語記事 Shock as New Zealand axes world-first smoking ban)
旧政権の環境・たばこ対策廃止 NZ首相が100日計画
2023年11月29日17時34分 時事 https://www.jiji.com/jc/article?k=2023112900899
【シドニー時事】ニュージーランド(NZ)で6年ぶりに保守政権を発足させたラクソン首相は29日、来年3月上旬までの100日間に実施する計49項目の計画を発表した。旧労働党政権が決定した脱炭素関連の環境対策や、紙巻きたばこの規制策を廃止する。産業界の意向に沿ったもので、野党や環境団体などの反発は必至だ。
ラクソン氏は「旧政権が過去6年間に行った以上のことを最初の100日間で行う」と強調。100日以内に必要な法案を提出すると明言した。
環境関連では、旧政権時代に禁止された沖合の石油採掘の再開に向け、関連の自然保護規制を撤廃する。化石燃料を対象とした増税も取りやめる。また、電気自動車(EV)などエコカー購入の補助制度を今年末までに廃止。最大都市オークランドの路面電車計画を中止する。
旧政権が制定したたばこ規制法は、2009年以降に生まれた人が紙巻きたばこを生涯吸うことを禁止し、たばこ販売店を現在の約6000カ所から600カ所に削減することが柱だった。しかし、新政権は「不公平で闇市場を生み、うまくいかない」との理由で廃止法案を提出する。たばこ産業や税収を維持する狙いもあるようだ。
2023.11.28 Tue posted at 20:00 JST CNN https://www.cnn.co.jp/world/35212056.html
(CNN) ニュージーランド新政権は、昨年成立していたたばこ禁止法の撤廃を決めた。減税の財源を確保するためとされるが、保健当局者や反たばこ団体が強い反発を示している。
法律は、2009年1月1日以降に生まれた世代へのたばこの販売を禁止し、違反者には最大15万NZドル(約1360万円)の罰金を科す内容。先進的な政策として注目を集め、来年7月までに施行される予定だった。
同国では先月の総選挙を受け、ラクソン新首相率いる中道右派の国民党と中道のNZファースト党、右派ACT党の連立政権が発足したばかり。
ラクソン氏は禁止政策の一部に同意できないと述べ、法の施行は闇市場の拡大を招くと主張した。
同時に、国内の喫煙率は下がっていると強調。引き続き禁煙教育を進めると表明した。
ニュージーランドの禁止法が世界の注目を集めたのに続き、英国も若者の喫煙率を段階的に下げる計画を発表している。英首相府の報道官は、同国の方針に変更はないと述べた。
ニュージーランド新政権のウィリス財務相は25日、禁止法を来年3月までに撤廃し、たばこ販売による増収を減税に役立てる方針を示した。
これに対してヴェラル前保健相は、前政権と真っ向から対立する政策だと反発を示し、「喫煙率を下げて8万人の命を救うための措置を、減税のために覆すとは」と非難した。
反たばこ団体からも「国民の命がたばこ業界の犠牲になる」など、失望の声が上がっている。