岐阜県多治見市「タバコ条例案」に歓迎と困惑 意見公募620件超

2019年8月25日 中日新聞 https://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20190825/CK2019082502000037.html

 

 市内全域で歩きたばこを禁止し、小規模飲食店に喫煙専用室を設置するよう努力義務を課す「タバコの害から市民を守る条例案」を九月議会に提出した多治見市。来年四月施行の改正健康増進法を上回る規制で、七日まで実施した意見公募(パブリックコメント)には六百二十六件の意見が寄せられた。子育て世代からは歓迎する声が上がる一方、飲食店経営者の間では「死活問題になりかねない」と困惑も広がっている。

 改正法では、飲食店や工場は原則屋内禁煙で、喫煙するには規定の専用室を設ける必要がある。しかし、客席面積が百平方メートル以下の小規模飲食店は対象外で、加熱式のたばこであれば専用室内で喫煙しながら飲食することを認めており、「受動喫煙の危険性が残る」と批判されている。

 これに対し、市は「次世代の喫煙者をつくらないためにも、たばこの害を周知する」として、改正法の上乗せ規制に乗り出した。罰則規定は設けないものの、小規模飲食店も対象に加え、加熱式も紙巻きと同様に取り扱うなど厳格化。改正法との同時施行を目指す。

 十六日の定例会見で古川雅典市長は「国の法律が腰砕けにならないよう、相当議論を重ねた。九月定例会の目玉」と条例案を紹介した上で「市職員も率先垂範する」として、職員の勤務時間内禁煙を来年四月から実施することも発表し、理解を求めた。

 市はこれまでも、公共施設百十五カ所の敷地内禁煙や、全面禁煙の飲食店などを「空気のおいしいお店」として表彰する制度を導入するなど、受動喫煙の防止に力を入れており、今回の条例案はそれをさらに強化するものとなっている。

 こうした市の動きは、子育て世代を中心に好意的に受け止められている。

 中学生の娘がいる市内の四十代の男性は「居酒屋でも吸えない店があり、社会の変化を感じる。子どもが小さいので、そういう店が増えてくれれば」と期待した。中学生の孫がいる六十代の女性も「夏祭りで孫に浴衣を着せたら、歩きたばこの火がたもとに付きそうになり怖かった」と条例に賛同しつつ、「吸う人を追いやるのは申し訳ない気もする」と案じた。

 一方、愛煙家の客を抱えている飲食店主の間には不満も。県喫茶飲食生活衛生同業組合の小島幸彦理事長は「今まで分煙が進まず、吸わない人に苦痛を与えてしまっていたのは反省点」としつつ、「たばこはお酒と同じ嗜好(しこう)品で、マナーを守り、適量を楽しむ人もいる。喫煙者の少数意見も聞いてもらいたい」と注文を付けた。

 市の担当者は条例案が議会で可決され次第、飲食店主らを集めた食品衛生の講習会などに出向いて周知を図る方針。「条例を機にたばこの害について市民に考えてもらい、啓発する意味合いもある。小規模飲食店にはできることから協力をお願いしたい」と話した。