ラグビーW杯、会場ごとに屋外喫煙所 五輪と対照的

2019年8月30日 夕刊 中日新聞 https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019083002000275.html

 

 スタジアムの喫煙所で観戦者が紫煙をくゆらす-。九月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は、試合会場ごとに屋外の喫煙スペースが設置され、たばこを吸える環境だ。規制が強化される中、来年の東京五輪・パラリンピックでは競技会場の敷地内を完全禁煙とする方針で、識者からは「禁煙のトレンドに遅れた対応」との声も上がっている。

 W杯に向けた大規模改修工事を昨年までに終えたラグビーの聖地、花園ラグビー場(大阪府東大阪市)。グラウンドを模した約二百二十平方メートルの屋外喫煙所が設置された。両サイドにはゴールポストもあり、円柱形の灰皿がラグビー選手のフォーメーションのように並ぶ。

 敷地内には他にも喫煙所があり、W杯の際はこれらで対応するという。東大阪市の担当幹部は「非喫煙者が、副流煙などを吸わないように設置した。文化が違う国の人たちに吸い殻をポイ捨てされても困るので、喫煙所は必要」と話す。

 豊田スタジアム(愛知県豊田市)も、大会組織委員会の方針に基づいて一階コンコースに二カ所の喫煙所を設置する。吹き抜けになっている場所で、仕切りをした上で動線を分けて受動喫煙に配慮する。一方、サッカーJ1の名古屋グランパスは、ホームゲーム開催時は全面禁煙としている。

 大会組織委は、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法に基づき、花園や豊田など全十二会場について屋内を原則禁煙とし、屋外もフェンスなどで区切った場所に喫煙所を設置する。ただ札幌ドーム(札幌市)のように喫煙専用室がある場合は、例外的に室内でもたばこが吸える見通しだ。

 組織委の担当者は「世界中の国と地域から訪れる観客に、快適な観戦環境を提供するのがわれわれの役割だ。たばこを吸わない人に配慮した上で必要な分煙措置を準備し、周知徹底したい」と説明する。

 一方、五輪・パラの組織委は二月、全競技会場の敷地内について、加熱式たばこも含めて完全禁煙とする方針を発表した。「たばこのない五輪」を掲げる国際オリンピック委員会(IOC)の強い意向を受けた対応で、既存の喫煙所も大会中は閉鎖される予定だ。

 法政大の杉本龍勇(たつお)教授(スポーツ経済学)は「禁煙化という世界的なトレンドから見ると、ラグビーW杯の対応は非常に遅れている。今からでも喫煙所を設けない方向にかじを切る方が望ましいが、設置する場合は、多くの人たちが通らない場所で必要最小限にとどめるべきだ」としている。

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ラグビーのグラウンドを模した屋外喫煙所=大阪府東大阪市の花園ラグビー場で