2019.08.02 デイリースポーツ https://www.daily.co.jp/society/life/2019/08/02/0012571550.shtml
東京五輪の開幕まで1年を切った。競技以外の部分で、五輪によって何が変わるのか。その一つが受動喫煙対策だ。会場だけでなく、街の飲食店などで完全禁煙化への動きが加速している。「煙のない五輪」がやって来る。
大会中の全競技会場内で加熱式たばこを含めて完全禁煙となる方針。2012年ロンドン大会や16年リオデジャネイロ大会では会場屋外に喫煙所が設けられていたが、東京では全廃となる。その流れで、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が7月から一部施行され、20年4月1日に全面施行される。会場から外に出ても、そこは“禁煙の街”なのだ。
大手外食チェーンを例に挙げよう。サイゼリヤは今年6月から全店舗で全席を禁煙化した。2か月を経て、来店客の反応はどうだろうか。
同社の広報担当は当サイトの取材に対し「賛否両論ございます。支持していただける方もいらっしゃれば、ご不満の方もいらっしゃいます」とし、客の増減には「店舗によって異なります。全体的には、減っている店舗のほうが多いです」と明かした。 同チェーンでは「区画分煙や分煙ガラスの設置、喫煙室の設置など」で店舗ごとに分煙に対応していたというが、「オリンピック以降も全席禁煙です」と明言した。
ガストなどを運営するすかいらーくは9月1日からグループ全店を全面禁煙する。同社広報は「駐車場も含め全面禁煙になることで、お子様連れのご家族や女性、シニアの方々などさらに安心してご来店いただけるようになると考えております。これまで喫煙をされていたお客様にはご理解をお願いする形となりますが、引き続きご来店いただけるよう魅力ある店舗づくりに取り組んでまいります」と今後の方針を示した。
一方で、五輪で来日する外国人客への期待感もある。すかいらーく広報担当は「英語・中国語に対応したメニューブックや多言語に対応した店内Wi-Fiの整備、キャッシュレス決済などの環境整備を進めております。五輪で来日されたお客様に当社ブランドをご利用いただき、五輪後も引き続き当社の多様な業態を通じて日本の食体験を楽しんでいただけるよう、努力してまいります」とした。全面禁煙を踏まえた上で、「東京五輪後」の取り組みは既に始まっているのだ。
「煙のない五輪会場」を出ても、そこには「煙のない街」が広がる。その点において、喫煙者の立場から異を唱える人もいる。
実業家、プロレスラー、タレントとマルチに活動する蝶野正洋は「何万人も出入りするスタジアムが完全禁煙になっても、嗜好品のたばこでリラックスしたい人がその中にいないはずがない。それでも吸うなというのは行き過ぎだと思う。吸わない人たちの迷惑にならないように、喫煙スペースをしっかり作り、マナーを守って分煙することはできないだろうか」と問題提起した。
「酒はそれほど飲まないが、たばこは好き」という蝶野。「妻の母国であるドイツに行くと喫煙者は多い。東京でも受動喫煙がない分煙システムの構築を考え、分煙できる未来都市になって欲しい」と訴えた。
だが、東京五輪を機に、賛否両論をはらみながら、日本は「煙のない社会」になっていく。もう後戻りはできない。そんな現実がある。