2023/03/07
Design Stories https://www.designstoriesinc.com/europe/non-smoking-space/
パリでは今、「子どもたちのタバコに対する見方」を変えるため、禁煙スペースがどんどん増えている。
フランスといえば喫煙大国というイメージがあるが、昨今の健康志向やタバコの値上げが理由となり、禁煙を試みる人もだいぶ増えてきた。
しかしながら最新の調査では、フランスの18歳〜75歳の20%以上が現在でも日常的に喫煙しているということだ。
パリの街を歩くと、男女問わず、日本より喫煙者が多い印象を抱く。
というのもフランスでは屋内が全面的に禁煙となっているので、喫煙者は自動的に屋外に集まってしまうためだ。
当然ながら受動喫煙の機会は多い。
こうした光景が子どもに与える影響も大きく、パリ市ではすでにいくつかの区で学校周辺の禁煙が一般化された。
学校周辺での禁煙はもちろんなのだが、パリ市内にある公園でも取り締まりが強化されている。
2019年からは市内52の公園が禁煙スペースとなっており、今年1月からはそれが70か所に拡大された。
目的は、受動喫煙をめぐる深刻な問題をパリの人々に知ってもらうと同時に、誰もが清潔で住みやすい環境を目指すこと。
なお違反者には38ユーロ(約5400円)の罰金が課される。
また3月からは、パリのスポーツ施設前でも禁煙の掲示が出され始めた。
場所はパリ13区のジョルジュ・カルパンティエ・スポーツセンターを初めとしたいくつかのスポーツジムにおいて。
以前は屋外の喫煙所であれば喫煙が可能だったが、今後は敷地内すべてが禁煙となる。
パリ市やパリの各区長は今、市内にある全スタジアムやスポーツ施設にもこの規則を拡大したい考えだという。
ただスポーツ施設前で喫煙をした場合、学校前や公園とは違い罰金は発生しない。
施設側はこれを、「愛煙家を無下に突き放すのではなく、タバコを吸いに行くのにわざわざ歩かせることで、ジムに通いながら喫煙するという矛盾に気づいてもらいたい」と述べている。
もう一つ、パリ路上における犬の糞・タバコのポイ捨ては、訪れる観光客が一番がっかりするポイントであり、「パリの悪い風物詩」として定着している。
これらは年々少なくなっているとはいえ、実際には今でも歩道脇や街路樹の植え込みなどに吸い殻を見かけるし、道路に置かれたゴミ箱から煙が上がっているということもある。
ちなみに吸い殻のポイ捨ては68ユーロ(約9520円)の罰金(犬の糞の放置も同様)だが、パリでは市の清掃員がこまめに掃除をしているためか、「自分が片づけなければ」という意識がなかなか改善されない。
パリの吸い殻量は2017年の資料で350トンにも上るそうだ。
2007年以後、フランスのレストラン・カフェでは店内と喫煙が許されるテラス側を分ける決まりが一般化された。
今ではこうして学校、公園、スポーツ施設前、駅構内で紙タバコ・電子タバコの両方が次々と禁じられるようになった。
しかしフランスの成人喫煙率は先進7カ国中ワースト1位の「タバコ大国」なため、パリ市は2024年のパリ五輪をきっかけに禁煙スペースを拡大し、喫煙者のモラルに関してもさらなる向上を目指している。
フランスでは毎年、75,000人が喫煙に起因して死亡していると仏衛生局は述べている。
この数はパリ首都圏が最も多いということだ。
喫煙に関してはまだまだ寛容に見えるフランスだが、一方でパリを中心に、禁煙者が増え少しずつ米国化しているというイメージも持つ。