2018.9.11 週刊ダイヤモンド編集部 https://diamond.jp/articles/-/179425
10月から始まるたばこ増税に合わせ、たばこメーカー各社の値上げ発表が出そろった。その裏で、メーカー側はかつてないほどの神経戦となった。加熱式たばこがこれまでと異なる税方式となったからだ。
紙巻きたばこについては、値上げによる需要減に対して利益を維持する値上げの経験則やノウハウがある。加熱式は今回初めての値上げ。各社手探りで値上げ幅を決断した。
加熱式は従価税と従量税を合わせた複雑な税制となり、使う葉タバコの重量といった個別の商品ごとに税率が異なる。そのため、単純に現行商品の価格だけを考えればいいわけではない。今後展開する加熱式の商品の葉タバコなどの重量とそれにかかる税までを踏まえ、それらと現行商品の価格差を戦略として考える必要がある。
加熱式において、JTは年末から来年頭ごろに、他社と同じ高温加熱タイプの新商品の発売を予定している。フィリップ・モリス・インターナショナルも年内をめどに「アイコス」の次世代機や、新たなヒートスティック商品(たばこスティック)の投入を決算会見で公表している。
商品の裾野が広がっていくことは間違いなく、その未発売品を含めて非常に細やかな価格シミュレーションが求められるのだ。
加熱式だけではなく、加熱式と紙巻きの価格差も重要な戦略になってくる。加熱式市場は足元で成長鈍化の指摘もある中、紙巻きとのバランスをどう取っていくか。
加熱式のトップシェアで市場をリードするフィリップ・モリスは、かねて加熱式重視の姿勢を表明し、紙巻きと加熱式の価格差をつけることで、加熱式へのシフトを促したい意向だ。
今回の値上げでは当初、他社に先駆けて、紙巻きの「マールボロ」などで50円の値上げを発表し、加熱式の方に割安感を与える思惑だったが、さまざまな外部要因があり、最終的に今回は他社並みの40円の値上げにとどめた。
今回のたばこ増税は単年で終わらず、段階的に実施されるもの。紙巻きについては2021年までに1本当たり3円増税し、加熱式は22年までに紙巻きの水準に近い税率へ増税していく。
JTは量産効果などで「プルームテック」のコストダウンが可能だとしているが、このように長期的に見て価格吸収力が強くなれば当然、値上げ戦略にも選択肢が生まれてくる。
商品もシェアも税制も変化が激しくなる中、来年以降、追加的に値上げをしていくかを含め、各社は価格戦略を問われる。たばこ価格は認可制であるという前提はあるものの、ほぼ横並びの値上げに落ち着くパターンは今年で見納めになるかもしれない。
10月の値上げは、今後長きにわたる“値上げ神経戦”の第1ラウンドにすぎない。
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参考までに
平成30年度・税制改正大綱で、タバコ税の8年ぶりの増税が決まりました。
(従来の紙巻きたばこは2018年10月から2021年10月まで、消費増税がある2019年10月を除く各年に1本あたり1円ずつ引き上げ、計3円増税する。
急速に普及が進む加熱式たばこも初めて増税し、従来の重量の計算方式を見直すとともに、価格に応じた課税方式を導入する等の見直しを行い、全体で2千億円超の増収を見込む。)
税制改正大綱
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/136400_1.pdf
2ページ、16ページ、96ページをご覧ください。