ホリエモンが「タバコの価格を3倍以上に」「喫煙にメリットなど一つもない」と訴えるワケ
2025年12月18日 9:00 Diamond oline https://diamond.jp/articles/-/378992
日本の喫煙率はいまだ15%台にとどまり、目標である「2035年までに10%未満」はこのままでは到底達成できない。堀江貴文氏は、価格政策と禁煙支援、そして電子タバコを含む一体的な規制こそ、喫煙率を確実に下げる現実的手段だと説く。日本が10年で大きな転換点を迎える方法とは?※本稿は、実業家の堀江貴文『日本医療再生計画 国民医療費50兆円時代の提言22』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。
私は以前から日本の喫煙問題について疑問を持っている。
先進国の中で、日本だけ喫煙率がなかなか下がらないのはなぜなのか?
理由は明確だ。政策が中途半端なのだ。
現在、日本の成人喫煙率は約15.7%。これを2035年までに10%未満にするという目標が掲げられているが、今のペースでは到底達成できないだろう。なぜなら、本気で喫煙率を下げたいなら、もっと大胆な施策が必要だからだ。
興味深いデータがある。タバコの価格弾力性はマイナス0.3からマイナス0.5程度。つまり、価格を10%上げれば需要は3~5%減少する。これは経済学的に証明された事実だ。特に若年層はこの数倍も価格に敏感だという。
私が注目しているのは、2010年の日本の事例だ。1箱あたり約110円の大幅値上げを実施した結果、販売数は10%減少し、喫煙者数も大きく減少した。しかも税収は800億円増加している。
これは実に合理的な結果だ。ニコチン依存症の人はすぐには禁煙できないから、値上げ幅ほどには需要は減らない。
結果として「健康面では喫煙減少、経済面では税収増」という一石二鳥の効果が生まれるのだ。
海外を見れば、もっと積極的な価格政策を取っている国は多い。オーストラリアでは1箱3000円を超える価格設定により、喫煙率を大幅に下げることに成功している。
日本はまだまだ甘いと言わざるを得ない。
ただし、タバコ増税には逆進性の問題がある。日本では収入が低い層ほど喫煙率が高い傾向があり、結果として低所得者層が高所得者層以上にタバコ税を負担しているのだ。
この問題の解決策は明確だ。増税による追加税収を、禁煙治療費の助成や禁煙支援サービスの拡充に充てればいい。研究によれば、タバコ値上げにより低所得者の方が高所得者より禁煙に踏み切りやすくなる傾向があることもわかっている。
つまり、適切な支援策と組み合わせれば、最大の利益を得るのは低所得者層なのだ。これは健康格差の是正にもつながる、極めて合理的な政策だろう。
禁煙外来の治療成功率は約34.5%。決して低くない数字だ。さらに企業と連携した取り組みでは、金銭インセンティブを組み合わせることで75%もの高い禁煙成功率を記録した例もある。
費用対効果の観点から見ても、禁煙治療支援は極めて優秀だ。喫煙に起因する医療費や生産性損失などの社会的コストは、2015年度の推計で医療費等で2兆500億円、広く社会全体の損失では最大7兆円に及ぶ。
これに比べれば、禁煙支援にかかる費用はごく僅かだ。アメリカ食品医薬品局(FDA)の若年向け禁煙啓発キャンペーン「The Real Cost」では、投資1ドルあたり180ドルもの医療費・社会費用を節約できたという分析もある。
これほど明確な投資対効果を示す政策は他にないのではないか。
最近普及している電子タバコや加熱式タバコについても、明確な方針が必要だ。WHO(世界保健機関)は「加熱式タバコは有害物質への曝露を減らしても無害にはならず、健康リスクの低減に繫がるという証拠もない」と明言している。
実際、加熱式タバコのエアロゾル中には紙巻きタバコ煙より高濃度の毒性物質が含まれている場合があり、安全性が担保されていないことは明らかだ。
日本では加熱式タバコの税率が紙巻きタバコより低く設定されているが、これは不合理だ。2026年度に税率を一本化する方向で検討が進められているようだが、遅すぎるくらいだろう。
海外では医療保険や生命保険における喫煙者への保険料上乗せ制度が導入されている。アメリカでは喫煙者に最大50%の割増しを認めたが、結果は芳しくなかった。喫煙者の保険加入率が低下し、禁煙率に有意な改善は見られなかったのだ。
この失敗から学ぶべきことは、ペナルティよりリワード型の設計が重要だということだ。日本の一部の健康保険組合では、禁煙外来の自己負担費用を最大1万5000円まで支給したり、禁煙治療を完了した場合に自己負担分を全額補塡するインセンティブを提供している。
これらは「やめたら得をする」というメッセージを与える好例であり、実際に禁煙率向上や医療費適正化に寄与している。
政策を成功させるには、国民の支持と協力が欠かせない。FDAの「The Real Cost」キャンペーンは、歯が黒くなる、肌の老化を早めるといった若者の関心に刺さる内容をCMに盛り込み、開始から2年で対象青少年の喫煙開始率を30%減少させる成果を上げた。
日本でも同様のアプローチが有効だろう。ただ怖がらせるだけでなく、美容や経済面のメリットを強調するメッセージが効果的だ。「タバコをやめれば年間○万円節約」「肌や歯が綺麗になる」といった具体的なメリットを強調すべきだ。
私が考える理想的な政策パッケージは以下の通りだ。
まず、段階的な大幅増税により、2035年までにタバコ1箱の価格を現在の3倍以上にする。これにより確実に需要は減少し、税収は増加する。
次に、その税収を禁煙外来の完全無料化と、禁煙成功者への報奨金制度に充てる。同時に、企業の健康保険組合と連携し、禁煙プログラムへの参加インセンティブを強化する。
さらに、電子タバコや加熱式タバコも含めて、すべてのニコチン含有製品に同等の税率を適用し、抜け道をなくす。
最後に、大規模な啓発キャンペーンを展開し、特に若年層に向けて「喫煙は時代遅れ」というメッセージを浸透させる。
日本が健康先進国になるには 喫煙率10%未満の達成が不可欠
これらの施策を同時並行で進めることで、2035年の喫煙率10%未満という目標は十分に達成可能だ。問題は、政府にその覚悟があるかどうかだけだ。
私は思う。タバコという20世紀以前の遺物にいつまでもしがみついている必要はない。合理的に考えれば、喫煙にメリットなど一つもないのだから。今こそ、科学的根拠に基づいた大胆な政策で、この国を本当の意味での健康先進国にすべき時だ。