2022.01.28 @DIME https://dime.jp/genre/1309618/
電子タバコを利用している人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると、自覚症状が重くなりやすいことを示唆するデータが報告された。
米メイヨー・クリニックのDavid McFadden氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Primary Care & Community Health」に1月5日掲載された。
研究結果によると、電子タバコ利用者がCOVID-19に感染した場合、電子タバコ非利用者よりも味覚・嗅覚障害、胸痛、頭痛、筋肉痛、悪寒、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が多く見られ、また従来型タバコとあわせた解析では、救急外来の受診頻度も高かったという。
米レノックス・ヒル病院のLen Horovitz氏はこの報告を基に、「また一つ新たに、電子タバコや従来型タバコをやめるべき理由、決して始めてはいけない理由が加わった」と述べている。
Horovitz氏によると、「電子タバコは肺に炎症を引き起こし、その炎症はあらゆる感染症の温床となる」という。
そして「COVID-19に関連する全身症状を悪化させ、発熱や筋肉痛、倦怠感、頭痛などの症状を増やすと考えられる」とのことだ。
McFadden氏らはこの研究に、2020年3月1日~2021年2月28日にメイヨー・クリニックで治療されたCOVID-19患者1万4,368人の医療記録を用いた。電子タバコ利用患者と、年齢、性別、人種が一致する電子タバコ非利用患者を1対5の割合で抽出。
18歳以上の成人患者、それぞれ289人と1,445人で構成されるデータセットを作成し、自覚症状の有訴者率を比較した。その結果、以下の症状について有意な群間差が認められた。
胸痛は電子タバコ利用者が16%、非利用者が10%(P=0.005)、悪寒は同順に25%、19%(P=0.0016)、筋肉痛39%、32%(P=0.004)、頭痛49%、41%(P=0.026)、味覚・嗅覚障害37%、30%(P=0.009)、悪心・嘔吐・腹痛16%、10%(P=0.003)、下痢16%、10%(P=0.004)、立ちくらみ16%、9%(P<0.001)。
救急外来の受診に関しては、従来型タバコとあわせた解析で、あらゆる理由による受診のオッズ比(OR)が3.68(95%信頼区間1.92~7.07)、COVID-19による受診がOR3.00(同1.21~7.39)だった。
米マウント・サイナイ医療センターのNeil Schachter氏は、この結果を理に適ったものだ」と論評。その理由を同氏は以下のように説明する。
「従来型タバコや電子タバコは気道や肺に損傷を与える。そのために呼吸器疾患を発症している患者がCOVID-19に罹患した場合、時には生死にかかわる問題となる。煙を吸うことで、気道の細胞にあるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体が増え、新型コロナウイルスに感染しやすくなるのではないか。新型コロナウイルスは細胞内に侵入する際に、ACE2受容体を足掛かりとするからだ。より多くのウイルスが侵入する結果として、COVID-19が重症化する可能性が高い」
またSchachter氏は、「この研究には18歳未満のティーンは含まれていなかったが、電子タバコはその年齢層にも利用されている。今回報告された結果と同じことが、10代の未成年者にも生じているのではないか」と述べた上で、ニコチンパッチやガムなどのタバコ代替品だけでなく、多くの禁煙手段がある現状を説明。
加えて、「飴を舐めるのも喫煙の欲求を抑えるのに役立つ。さらに、オンラインまたは対面によるサポートグループも利用可能だ」と、さまざまな禁煙手段を紹介している。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/21501319211062672