マレーシア、「タバコなき世代」への挑戦
ブータン、ニュージーランドに続く禁煙国家になるか

   喫煙と健康の関係は、世界各国共通の問題だ。国連の世界保健機関(WHO)は、タバコを吸わないことが一般的な社会習慣となるように対策を講じるべきだ、という決議を出し、毎年5月31日を「世界禁煙デー」と定めている。2月6日のマレーシアの英字紙ザ・スターは、この問題を社説で採り上げた。

2005年以降生まれへの販売を禁止

 社説によると、マレーシア保健省は2005年以降に生まれた若い世代に生涯にわたりタバコ関連製品の販売を禁止する施策を提案している。これは、国会で審議される新たな「タバコと喫煙制限法」の一部であり、承認されれば2023年早々にも施行され、マレーシアはニュージーランドのように将来の全面禁煙に向けて一歩を踏み出すことになる。
 ニュージーランドでは現在、2027年に14歳になる国民に対し、生涯にわたってタバコの購入を認めない法案を同年から施行することが検討されており、今年6月にも議会に提出される見込みだという。ロイター通信によれば、このニュージーランドの法案は、「実現すれば、タバコ販売が禁止されているブータンに次いで、世界的に最も厳格なレベルのタバコ規制になる」という。

 マレーシアのこの法案について、社説は「健康な世代を産み出すことになる」と、高く評価する。社説によれば、2月4日の世界対がんデーでスピーチした保健大臣は、同国における死亡原因のうち、がんで亡くなる人々の22%を喫煙が占めると述べた。また、呼吸器専門の医師によると、国内の喫煙者の50%が、喫煙が要因とされる病気で死亡しているという。 

膨大な税金と治療費

 これに対し、タバコ関連の業界からは「国は膨大な額のタバコ税を失うことになるだろう」という反論が上がっているという。それでも社説は、「保健大臣が指摘した通り、肺がんの治療費負担は年間1億3270万リンギに上る。喫煙者の数を減らすことは、この治療費を減らすことになる」と、社説は指摘する。
 続いて社説が指摘するのが、密輸タバコの問題だ。マレーシアに喫煙者が多いもう一つの理由として、税を逃れた密輸タバコが安価で販売され、入手しやすいことが挙げられる。この背景にあるのは、密輸を見逃しやすい汚職体質だ。さらに、こうした密輸タバコは小さな店で一本ずつ売られており、若い世代でも買い求めやすく、モニターがしにくいことが、問題を複雑化しているという。

「密輸に対して厳罰を科すだけでなく、タバコの販売者に対するモニターと罰則の強化にも力を入れ、密輸を見逃している政府関係者の汚職にも恐れず公平にメスを入れるべきだ」
 さらに、若い世代に対し、単に喫煙の危険性を知らせるにとどまらず、正しい教育を行うことも不可欠だ。
 世界でもまれな「禁煙国家」の道を歩み始めたマレーシアの取り組みを見守っていきたい。

 (原文 https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/the-star-says/2022/02/06/towards-a-smoke-free-generation)

参考報道 2022.01.28  マレーシア 2005年生以降へのタバコ販売禁止に向け調整(sputnik