こんなにある「タバコ」の害、50歳以前の禁煙でがんのリスクは大きく減少

Forbes  2024.08.15 12:30 https://forbesjapan.com/articles/detail/73106

 

継続的な禁煙は、特に50歳以前に禁煙した場合、多くの「がん」における罹患リスクの低下と関連することが、オープンアクセスの医学誌『JAMA Network Open』に掲載された大規模な集団ベースの研究によって明らかになった。

この研究は、韓国で200万人以上の調査対象者を13年以上にわたり追跡し、禁煙してから経過した時間によるがんの罹患リスクの時系変化を調査した。その結果、喫煙者で完全にタバコをやめた人は、継続的に喫煙していた人と比べて、あらゆるがんの罹患リスクが17%低いことがわかった。完全にタバコをやめた人の罹患リスク低下は、肺がん、肝臓がん、胃がん、大腸がんなど、いくつかのがんで見られた。

50歳以前に禁煙すると、がんの罹患リスクはより大幅に減少したが、どの年齢で禁煙しても、がんの罹患リスク減少に関連すると研究者たちは報告している。

喫煙は依然として世界的に健康に対する深刻な脅威だ。米国立がん研究所によると、喫煙は12種類以上のがんと関係があり、その中でも肺がんは世界的に最も喫煙者の死亡者数が多い。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、肺がんによる死亡者のうち10人中9人近くがタバコの喫煙や副流煙が原因であるという。


喫煙は身体のほぼすべての部位におけるがんの原因となり得る。ほんの数例を挙げると肺がん、結腸がん、子宮頸がん、血液がん、腎臓がん、膵臓がんなどが、喫煙と関連している。

喫煙の有害性はがんに留まらない。CDCによると、喫煙は心疾患や脳卒中のリスクを2倍から4倍に高めるという。喫煙とタバコに含まれる毒性物質は、血管の内壁を傷つけ、血管を収縮させ、最終的に高血圧、心疾患、脳卒中を引き起こす。

タバコの有害作用は、1日に1箱を吸うような人に限った話ではない。CDCによると、1日に5本以下の喫煙でも心血管疾患の原因になることがあるという。

 

タバコは気管にも損傷を与えるため、呼吸困難や多くの肺疾患を引き起こすおそれがある。喫煙が原因となる、または原因となる可能性がある肺疾患には、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、喘息などがある。CDCによると、喫煙者が慢性閉塞性肺疾患で死亡する確率は、非喫煙者の13倍であるという。禁煙はこのような病気の進行を遅らせたり、場合によっては好転させ、生活の質を向上させる。

禁煙によって精神的な健康も改善できる。喫煙の習慣によるニコチン依存症は、タバコをやめようとする人にストレスや不安をもたらす。禁煙することによって、依存症の束縛から解き放たれ、健康全般をよりコントロールすることが可能になり、自尊感情(自己に対して肯定的な評価を抱いている状態)を高めることができる。

喫煙はまた、個人にとっても社会にとって経済的な負担をもたらす。米国ではタバコ1箱の平均価格は8ドル(約1200円)で、いくつかの州では12ドル(約1770円)近くする(日本では500〜600円ほど)。禁煙すれば個人はお金を節約でき、喫煙に関連する病気にともなう医療費も削減できる。

CDCによれば、米国が2018年に被った喫煙によるコストは6000億ドル(約88兆円)を超えるという。その中には、2400億ドル(約35兆円)を超える医療費と、3720億ドル(約55兆円)近い生産性損失が含まれる。現在は米国で2800万人以上の成人が喫煙している。より多くの米国人がこの習慣を断てば、莫大なコストが禁煙によって削減されるだろう。


喫煙をやめることが、より健康的な未来を手に入れるための真の鍵となる。禁煙は、多くのがんに罹るリスクを減らし、心臓血管や気管の健康を回復させ、精神の幸福を高め、さらに銀行口座に益をもたらすことさえあるのだ。

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