配信 現代ビジネス https://news.yahoo.co.jp/articles/b22fc5818e3d3227b24ee9f7a389cfa4b8e47529
日本人には、日本人のための病気予防法がある!
同じ人間でも外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がなく、むしろ逆効果ということさえあるのです。見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための方法を徹底解説!
*本記事は『欧米人とはこんなに違った
日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』(講談社ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
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日本人のためのがん予防法
日本人と欧米人は、体質も、病気を招く原因も違うので、欧米で得られた研究結果をそのまま日本人に当てはめることはできません。あくまで参考にとどめて、改めて日本で調査をやりなおす必要があります。
日本人を対象とする調査報告が少しずつ集まってきたことから、国立がん研究センターが2011年に、日本人のためのがん予防法「がんを防ぐための新12か条」を公表しました。
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1
たばこは吸わない
2
他人のたばこの煙をできるだけ避ける
3
お酒はほどほどに
4
バランスのとれた食生活を
5
塩辛い食品は控えめに
6
野菜や果物は不足にならないように
7
適度に運動
8
適切な体重維持
9
ウイルスや細菌の感染予防と治療
10
定期的ながん検診を
11
身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12
正しいがん情報でがんを知ることから
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1と2はタバコの害に関するものです。日本で2016年に新たにがんと診断される人数を予測したデータによると、多いほうから、大腸がん、胃がん、肺がん、前立腺がん、乳がん、肝臓がんで、米国では順位の低い胃がんと肝臓がんが今も上位に入っています。喫煙は肺がんだけでなく、胃がんと肝臓がんの発症率も上げるとされ、日本人男性のがんの3割は喫煙が原因という推計もあります。日本でも、がん予防に禁煙が重視されるのは当然と言えるでしょう。
しかし、その次が違います。タバコの次はアルコール。米国の調査では、アルコールをやめていたら予防できたがんは3%だけでした。しかし、日本で得られたデータにもとづく分析では、飲酒はすべてのがんの発症率を高め、とりわけ大腸がん、肝臓がん、食道がんの危険を確実に押し上げるという結果が得られています。このうち食道がんは、秋田、沖縄、鹿児島など、飲酒量が多い県でとくに発症率が高くなっていました。日本で作成された「新12か条」で、節酒が3番目に来ているのはこのためです。欧米でも大腸がんは多いものの、ここにも人種差があり、欧米人はあまりアルコールの影響を受けません。
もう一つ異なるのは、日本の予防法の9番目に「ウイルスや細菌の感染予防と治療」が入っていることです。国際がん研究機関は、病原体が長期にわたって感染することで発生するがんの割合は、世界全体で18%、先進国全体では9%としています。ところが日本は、肝炎ウイルスとヘリコバクター・ピロリ菌の感染率が世界でも高いので、感染が原因で発生するがんが20%を占めています。
米国では感染によるがんが多くないことから、米国のがん予防法には病原体の感染に関するものは入っていません。その代わり、7番目に「カビのはえた食品は食べない」という項目がありますね。これは、食パンやミカンにはえる青カビのことではありません。亜熱帯地域に生息するカビがアフラトキシンという毒素を作り、この毒素を長期間摂取すると肝臓がんを発症するおそれがあるのです。保存状態が悪いトウモロコシ、落花生、スパイス、ナッツにはえやすく、輸入作物に付着して入ってくることがあるため、米国だけでなく日本も水際で厳しく監視しています。
じつは、このカビ、日本で古くから、酒、みそ、しょうゆなどの発酵に使われてきた麴菌、正確に言うとコウジカビとよく似ていることが知られていました。そのため、このカビと麴菌の遺伝子を比較したところ、なんと、元は同じカビで、遺伝子変異により、偶然、麴菌が生まれたことが明らかになりました。有害なカビが発酵食品の生産に役立つことに気づいた古代の人が、長い年月をかけて、有用で、安全なものを選び出したのでしょう。麴菌にも毒素を作る遺伝子がありますが、遺伝子の一部が欠けているので実際に毒素を作ることはできません。遺伝子変異が、こんな奇跡を生むこともあるのです。
さらに連載記事<「胃がん」や「大腸がん」を追い抜き、いま「日本人」のあいだで発生率が急上昇している「がんの種類」>では、日本人の体質とがんの関係について、詳しく解説しています。
奥田 昌子(医学博士)