タバコの煙が染み込んだ衣服に触れるだけで病気のリスクが高まる可能性

2022年11月09日 12時30分 gigazine  https://gigazine.net/news/20221109-thirdhand-smoke-trigger-skin-diseases/

タバコが非喫煙者に及ぼす害としては、喫煙により生じた副流煙を吸い込んでしまう受動喫煙が知られていますが、これとは別に衣服や家具などに付着したタバコ由来の化学物質「サードハンド・スモーク」の吸入も問題視されています。新たな研究では、サードハンド・スモークが皮膚に付着した場合、皮膚炎などの病気になるリスクが高まることが示されました。

https://www.sciencealert.com/third-hand-smoke-lingering-on-surfaces-may-trigger-skin-disease-scientists-warn

サードハンド・スモークは衣服や部屋の壁、家具、体などに残留するタバコ由来のニコチンなどを含む有害物質、およびこれらの有害物質を吸入することを指します。近年はサードハンド・スモークがもたらす害に注目が集まるようになり、衣服に付着したサードハンド・スモークが1年以上残留するという研究結果や、サードハンド・スモークが再び空気中に広がって滞留するという研究結果も報告されています。

カリフォルニア大学リバーサイド校の博士課程に在籍していたShane Sakamaki-Ching氏は、サードハンド・スモークが人体に取り込まれる際の主要経路である「皮膚」に着目し、人間の皮膚をサードハンド・スモークに暴露する実験を行いました。

実験に参加した10人の被験者の年齢は22~45歳で、いずれも健康な非喫煙者でした。被験者は20~30日間隔で行われた2回の実験セッションで、サードハンド・スモークを染みこませた衣服または清潔な衣服を3時間着用し、その間にトレッドミルで15分ほど運動しました。トレッドミルでの運動は発汗を誘発し、サードハンド・スモークの粒子の取り込みを促進することが目的だったとのこと。なお、被験者には自分が着用している衣服が清潔なのか、それともサードハンド・スモークが付着しているのかは知らされませんでした。

研究チームは被験者から実験の10時間前、実験から3時間後、8時間後、翌朝の起床時、22時間後に血液および尿サンプルを採取し、タンパク質や酸化ストレスなどのバイオマーカーを分析。サードハンド・スモークの付着した衣服を着ていた場合と清潔な衣服を着ていた場合で、どのような違いが現れるのかを調べました。

分析の結果、サードハンド・スモークが染みこんだ衣服を着ていた場合では、DNAに対する酸化ダメージや血中タンパク質などのバイオマーカーが実験から22時間後まで上昇することが判明しました。被験者は皮膚や健康状態の変化を示さなかったものの、これらのバイオマーカーは接触性皮膚炎乾癬(かんせん)に関連しているとのことで、Sakamaki-Ching氏は「これはサードハンド・スモークの経皮暴露が、炎症誘発製皮膚疾患の分子的な開始につながるという考えを裏付けるものです」と述べています。

論文の共著者でカリフォルニア大学リバーサイド校の細胞生物学教授であるPrue Talbot氏は、「サードハンド・スモークが人間の健康に及ぼす影響についての知識は一般に不足しています。喫煙者が所有していた中古車を購入する場合、何らかの健康リスクを負うことになります。喫煙可能なカジノに行けば、肌をサードハンド・スモークにさらしていることになります。喫煙者が使っていたホテルの部屋に泊まるのも同様です」とコメントしました。

今回の研究結果は、サードハンド・スモークのリスクを人々に認識させるために役立つものです。研究チームは今後、より長期間にわたってサードハンド・スモークにさらされた大きな集団を対象にする研究を計画しているほか、電子タバコの残留物についての研究も計画しているとのこと。

Sakamaki-Ching氏は、「この研究結果は、医師がサードハンド・スモークにさらされた患者を診断する際や、サードハンド・スモークで汚染された室内環境の改善についての規制ポリシー開発に役立ちます」と述べました。