たばこも電子たばこも、吸う人には骨折が多い

 電子たばこによる健康への悪影響に関する研究が増えているが、新たに骨折リスクとの関連が報告された。電子たばこの利用により、大腿骨頸部骨折や脊椎(せきつい)圧迫骨折、手首の骨折のリスクが46%増加するという。詳細は「American Journal of Medicine Open」に1122日に掲載された。論文の筆頭著者である米ピッツバーグ大学医療センターのDayawa Agoons氏は「電子たばこが一部の人が考えているほど無害ではないことを示す、新たなエビデンス(医学的証拠)がまた一つ加わった」と述べている。立っていての転倒による骨折だけでなく、座っているなど、体の位置が低い状態からの骨折も増加していたという。

米国人約5600人のデータを分析

 Agoons氏らは調査に、201718年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを使った。この調査の参加者5569人のうち「電子たばこを利用したことがある」と回答したのは1050人(18.8%)だった。大腿骨頸部骨折、脊椎圧迫骨折、手首の骨折の経験の有無を問うと、444人(8.0%)が「経験あり」と回答した。なお、これら3種類の骨折は脆弱性骨折として発生することが多い。脆弱性骨折とは、わずかな力で生じる骨折のことで、骨が弱くなっている場合に起こる。

 骨折リスクに影響を及ぼし得る要因(年齢、性別、人種、教育歴)を考慮して分析すると、電子たばこを吸う人や、以前に吸っていた人が骨折を経験した割合は、電子たばこを一度も利用したことがない人に比較して、89割も多いことが分かった〔調整有病率比(aPR)が、電子たばこの現ユーザーは1.7795%信頼区間1.043.02)、元ユーザーは1.89(同1.442.48)〕。考慮する要因にBMI<体格指数=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)>や身体活動習慣、ステロイド使用、骨粗鬆症の家族歴などを加えると、現ユーザーでの既往者の多さは有意性(統計的に偶然ではないといえる性質)が消失したが、元ユーザーについては引き続き有意だった〔aPR1.46(同1.101.94)〕。

 次に、従来型のたばこを吸ったことがなく電子たばこも利用したことがない人を基準として比較した。すると、従来型のたばこの現喫煙者で電子たばこの利用経験がない人はaPR1.63(同1.182.25)であり、さらにデュアルスモーカー(両方のタイプの現ユーザー)はaPR2.41(同1.284.55)と、骨折経験者が顕著に多いことが分かった。

 これらの結果についてAgoons氏は「電子たばこが骨折リスクを高めるという因果関係は明らかでないが、強固な関連があることは確認された」と述べている。この関連の背景として同氏は「従来型たばこを吸う人の骨折リスクの高さには、ニコチンの影響があることが分かっている。電子たばこにもそれなりの量のニコチンが含まれているので、従来型たばこと同様に電子たばこの場合も、ニコチンが骨折リスクを高めると推測される。ただし、電子たばこに含まれるニコチン以外の化学物質が関与している可能性もあり、さらなる研究が必要だ」と解説している。

 またAgoons氏は「医療提供者は患者に対して電子たばこの利用状況を質問し、利用者には、年齢にかかわらず骨が弱くなる潜在的なリスクがあることを伝えるべきだ」と述べている。さらに、電子たばこの有害性とそのメカニズムの研究の推進に加え「人々を保護するための規制措置が必要」と提言している。

 本研究には関与していない、米ノースウェル・ヘルスのたばこ対策センターのPatricia Folan氏は「電子たばこに関する規制措置の必要性が考慮されないまま市場が形成されたことによる問題が、また一つ浮かび上がった。電子たばこによる健康への脅威を示す研究結果のリストに、本研究の結果も追加される」と語る。同氏によると「電子たばこが登場した時に流布されたのは『禁煙しようとする喫煙者を、安全で効果的に支える手段だ』というメーカーの言葉だけだった」という。

 Folan氏はまた「(米国では)10代の若者や若年成人の多くが電子たばこを利用している。因果関係を証明する研究は必要だが、現段階でも、小児科医を中心とする医療従事者が、骨の健康に対する電子たばこの潜在的リスクについて、患者に警告を発する必要がある」と語っている。そして、禁煙や電子たばこの利用をやめたい人に対し「ニコチン代替品だけでなく、医師であれば米食品医薬品局(FDA)承認済の禁煙補助薬を処方可能だ」と、受診を勧めている。(HealthDay News 20211122日)