2017年3月3日 北海道新聞社説 http://editorial.x-winz.net/ed-44061
厚生労働省が受動喫煙防止の強化案を公表した。
バス・タクシーは全面禁煙、医療機関や学校は敷地内禁煙、官公庁や運動施設は屋内禁煙である。
飲食店やサービス業の施設、ホテル・旅館も喫煙室の設置を認めつつ建物内を原則禁煙とした。
さらに、喫煙者の悪質な違反には30万円以下の過料を科す。
施設によって濃淡はあるが、閉ざされた空間では禁煙とする方向性が明確になったと言えよう。
厚労省は、こうした対策を盛り込んだ健康増進法改正案の今国会への提出を目指している。
受動喫煙が原因で死亡する人は、国内で年間1万5千人と推計されている。健康被害防止に向けて徹底的な議論を求めたい。
焦点となるのは、小規模な飲食店の取り扱いだろう。
厚労省案は、居酒屋や焼き鳥屋などを含む飲食店を、専用の喫煙室設置を認めた上で禁煙とした。
一方、未成年が立ち入らない規模の小さいバーやスナックなどを例外と位置づけ、喫煙を認めている。目安は30平方メートル以下という。
飲食店については、居合わせた客や従業員の受動喫煙を防ぐ観点から全面禁煙を求める声がある。
一方、飲食店側からは、禁煙にした場合に客足が遠のくとの不安が聞こえてくる。とりわけ小規模店は喫煙室の設置が難しい。「小規模」の定義も問われよう。
それだけに、関係者から十分に意見を聴取した上で議論を深める必要がある。
その際の大前提は、受動喫煙の被害者を出さないことだ。客はもちろん、店主、従業員ら全員による明確な合意がない限り、喫煙を認めるべきではなかろう。
気になるのは、屋内喫煙の範囲が狭まることで、屋外での喫煙が増える可能性があることだ。
減ってきてはいるが、歩きたばこは依然として目につく。自治体が禁止と決めたエリアでたばこを吸う人もいまだに見かける。
周囲への配慮など、喫煙者のマナー順守が不可欠だ。マナーを守らない喫煙者の存在が、受動喫煙被害を広げている現実を忘れてはならない。
世界保健機関(WHO)の調査では、49カ国が既に「屋内全面禁煙」を法制化するなど、飲食店を含む公共の場では「完全禁煙」が世界標準になっている。
WHOなどから、日本の受動喫煙対策は「世界でも最低レベル」と、いつまでも指摘されているようでは困る。