2018/07/20 05:00 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/210425?rct=c_editorial
受動喫煙対策を強化する初の罰則付きの改正健康増進法が、参院本会議で可決、成立した。
ただし中身は不十分で、世界保健機関(WHO)の基準に照らしても、現在の4段階中の最低ランクから1段階上がるにすぎない。
飲食業界などの反発を受け、自民党に一部が抵抗し、厚生労働省の当初案から大きく後退した。骨抜きのそしりは免れない。
受動喫煙による健康被害は大きく、手をこまぬいてはいられない。実効性を高めるよう、規制の一層の強化が不可欠だ。
改正法の焦点は、飲食店を巡る規制だった。
当初案は店舗面積30平方メートルを超える店は禁煙としていたが、改正法は客席が100平方メートル以下で資本金5千万円以下の店まで表示付きでの喫煙を認めた。
2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、同じ時期に施行される東京都の受動喫煙防止条例は、従業員を雇っている飲食店は原則禁煙とした。
都条例では都内の飲食店の84%が規制対象となるが、改正法は45%にとどまる。国の規制の甘さが際立つ。
受動喫煙の影響で亡くなる人は年1万5千人に上るとされ、医療費は年3200億円かかるという。政府・与党は、国民の健康をなおざりにしてはいないか。
当初案より後退したのは飲食店だけではない。学校や病院は敷地内禁煙だったが、結局、屋外での喫煙所の設置が認められた。
完全禁煙でないと受動喫煙は防げない。「子ども、患者は受動喫煙による健康影響が大きいことを考慮し、対策を一層徹底する」との改正法の趣旨に反する。
東京五輪を「たばこのない五輪」にするよう、WHO事務局長は昨年3月、日本政府に「屋内の公衆の集まる場での喫煙の完全禁止を全国レベルで実施するよう要請する」との書簡を送った。
改正法がこの要請に応えているとは言い難い。近年、五輪を開いたロシアやブラジルなどと比べても大きく見劣りする。
日本世論調査会の調査では、56%の人がもっと厳しい受動喫煙の規制が必要と答えている。
日本の受動喫煙対策を世界水準に引き上げるよう、不断の努力が欠かせない。
北海道は喫煙率も肺がんの死亡率も全国一高く、とりわけ受動喫煙対策が急がれる。
道が率先して、厳しい規制を伴う条例を制定すべきだ。