来年6月ごろ利用を始める新しい道議会庁舎(札幌市中央区)に喫煙所が設置され、建物内が全面禁煙とならない見通しだ。最大会派の自民党・道民会議と第2会派の民主・道民連合が設置を求めているため。道の大半の施設が禁煙となる中、現在の道議会庁舎にも喫煙所がある上に分煙も徹底されていない現状に加え、たばこの害に対する議会の姿勢が問われそうだ。
改正健康増進法では7月から行政機関の敷地内が全面禁煙となるが、道議会庁舎は「議決機関」だとして規制がない。
ただ、来年4月からは同法により飲食店などと同様に原則禁煙となり、喫煙所を設置するには国の基準に基づき排気や分煙対策を施した「喫煙専用室」とする必要がある。コストがかさむ上に、分煙の徹底も求められる。
現庁舎には、自民、民主の2会派と傍聴者控室の計3カ所に喫煙所がある。しかし、一部議員が喫煙所以外でも喫煙し、批判を受けている。
道議会事務局によると、各会派は2011年に庁舎内を分煙し、希望する会派には喫煙所を設置する―と取り決めた。今回、北海道新聞が全5会派の幹事長に行ったアンケートに、自民、民主の2大会派が新庁舎にも喫煙所の設置を求める考えを示した。他の3会派は敷地内の全面禁煙を主張した。
議席の8割を占める2大会派の意向により、11年の取り決めが新庁舎でも踏襲される見通し。議会事務局も今月中に各会派の意向を確認する。
道の施設は大半が禁煙となっており、道庁本庁舎は08年から建物内を全面禁煙とした。北海道医師会の長瀬清会長は「議会庁舎は議員のものではなく、道民のものだ。公共施設はすべて屋内禁煙とするべきだ」と指摘している。
新庁舎は来年1月に完成し、6月ごろに利用を始める予定。地上6階、地下1階で延べ1万9200平方メートルで、議員控室は3、4階にあるが、詳細な位置は決まっていない。
2019/05/31 18:04 更新 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/310513
受動喫煙対策を強化する改正健康増進法に基づき、7月から学校や行政機関の敷地内が全面禁煙となる中、道議会庁舎(札幌市中央区)が今回の規制対象に入っていない。議会庁舎は「議決機関」で、行政機関ではないとの国の見解があるためだ。しかし、一般の傍聴者が出入りする公共施設であるにもかかわらず、分煙すら徹底されていないのが現状で、専門家などから疑問の声が出ている。5月31日は「世界禁煙デー」―。
道の施設は大半が禁煙となっており、道庁本庁舎は2008年に建物内を全面禁煙とした。これに対し、道議会庁舎内には3カ所の喫煙所がある。11年に各会派が「庁舎内の全面禁煙に向け、当面分煙する」と合意したものの、一部議員は会派の控室などで公然と喫煙を続け、これまでも批判を浴びてきた。
改正法の施行を控え、道庁本庁舎と地下通路でつながる道議会庁舎について、道の担当者が厚生労働省に確認したところ、議決機関であり、7月1日から敷地内禁煙となる「第1種施設」には当たらないことを確認したという。
改正法では行政機関や病院などの第1種施設は7月から原則、敷地内禁煙となる。道内の大半の市町村議会は市役所や役場庁舎の一部となっており、第1種の規制が適用される。第1種は建物内は認めないが、受動喫煙を防止する措置をとった屋外の喫煙所の設置は認める。道も本庁舎近くにあるプレハブの喫煙所は、来庁者が通常立ち入らないとして、当面存続させる。
一方、飲食店など多数の人が利用する「第2種施設」は来年4月から原則禁煙となる。第1種施設より規制は緩く、煙が外に漏れないなどの対策を施し、国の基準をクリアすれば建物内に「喫煙専用室」を設置することができる。道議会庁舎は第2種に含まれる。
道議会庁舎は建て替え工事中で、来春完成する新庁舎内に喫煙所が設置される可能性がある。村田憲俊議長は20日の就任記者会見で「新庁舎ができるので(分煙のあり方を)議論しなければいけない」と述べた。
過去には道議会全会派で受動喫煙防止条例の制定を目指したが、愛煙家の道議らが難色を示したことなどで見送った経緯がある。現在は道が条例制定を検討しており、4月に受動喫煙について関係団体から聴取した意見の中に「道議会も第1種施設とするべきだ」との声があった。
東北大の黒沢一教授(産業医学)は改正法について「そもそも規制対象を行政機関ではなく、『すべての公共機関』とすべきだった」と指摘。「分煙すらできていない議会は、とんでもない。受動喫煙対策の旗振り役を担い、議会自ら全面禁煙を判断すべきだ」と話している。