禁煙徹底 受動喫煙防止を 札幌でフォーラム、美唄では講演会

2019/06/11 17:15  北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/314134?rct=n_medical

 

 世界禁煙デー(5月31日)と禁煙週間(5月31日~6月6日)に合わせ、禁煙や受動喫煙防止を呼びかける催しが札幌、美唄の両市で開かれた。札幌の北海道禁煙フォーラムで日本禁煙学会の松崎道幸・北海道支部長が加熱式たばこの問題点を指摘。美唄市の健康づくり講演会では旭川医科大の西條泰明教授(公衆衛生学・疫学)が、美唄市が2016年7月に施行した受動喫煙防止条例の効果を検証した調査結果を発表した。

■加熱式たばこ「紙巻きの害に近い」 日本禁煙学会道支部長・松崎道幸氏

 札幌駅前通地下歩行空間で開かれた北海道禁煙フォーラムで、道北勤医協旭川北医院院長で呼吸器内科医の松崎さんは加熱式たばこについて「紙巻きたばこと同様に葉タバコを使っている。燃やさないで熱を加えてニコチンを発生させている」と説明した。16年にテレビ番組で紹介されて一気に広まったことや「成人の数%、喫煙者の2割程度が使用」という国内の調査による推計を紹介した。

 松崎さんは、加熱式たばこの問題点として《1》使用する本人に害がある《2》周囲の空気を汚す《3》禁煙を邪魔する《4》子どもの喫煙を促進する―の四つを挙げた。国内外の調査データを交えて解説した。

 松崎さんは有害性について、ある加熱式製品と紙巻きたばこを比較し「有害物質のタールは70~120%程度、ニコチンも100%かそれ以上、この二つは紙巻きと大体同じと考えてよい。ただし一酸化炭素は1%でほとんど出ない」。その上で「加熱式は焦げたプラスチックフィルターから有害物質が出たり、さまざまなフレーバー(香り)に、健康への影響がはっきりしないものが含まれているようだ」と話した。

 また加熱式を含む電子たばこを吸っている人の側にいた非喫煙者の49%が「気分不良」「目やのどの痛み」を訴えたという国内の調査を紹介。電子たばこ使用者の72%が紙巻きたばこも吸っているデータを踏まえて、加熱式と紙巻きの併用が「ニコチン依存症の慢性化につながる」と指摘した。

 松崎さんは「煙の出る紙巻きたばこは吸いづらくなってきたので、加熱式に替えたり併用したりする人がいるが、加熱式の害は紙巻きに近い。禁煙の場所では加熱式たばこも禁止すべきだ」と訴えた。

■美唄の条例「脳卒中や急性心筋梗塞減」 旭川医科大教授・西條泰明氏

 美唄市内のホテルで開かれた健康づくり講演会で西條さんは、受動喫煙防止条例の施行後、市民の脳卒中や急性心筋梗塞の発症が減ったという検証結果を約130人を前に発表した。「条例は(脳卒中や急性心筋梗塞の)予防に効果があると考えられる」と述べた。

 調査は、脳卒中や急性心筋梗塞を発症した市民のほとんどの入院先である砂川、岩見沢の両市にある病院の入院患者数(人口10万人当たりに換算した1カ月平均)を、条例施行の前と後の2年間で比較。脳卒中と急性心筋梗塞を起こして救急車で搬送した患者数(同)も同様に比較した。

 脳卒中は入院患者(3施設)が施行前の270人から施行後に227人と16%減、救急搬送患者も18%減少。急性心筋梗塞では入院患者(3施設)が施行前の53人から施行後は47人と11%減、救急搬送患者も15%減少した=グラフ=。

 これに対して、美唄市周辺での発症が増えている傾向がうかがえた。空知管内で唯一、重篤な急患を24時間体制で受け入れる3次救急医療機関の砂川市立病院では、脳卒中と急性心筋梗塞の入院患者数(人口10万人当たりに換算した1カ月平均。美唄市民は除く)が、条例施行後の期間でそれぞれ12%、23%増えた。

 西條さんは、喫煙や受動喫煙は脳卒中や心筋梗塞になる危険因子の一つで、受動喫煙で心筋梗塞などの虚血性心疾患になる危険性は1・3倍程度高くなることなどを説明。市と市民に「さらに受動喫煙ゼロを目指して取り組みをぜひ続けてもらいたい。市民にとって非常に良いことだと(データを)解析して実感した」と呼びかけた。

 

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