来年1月完成の道議会新庁舎内への喫煙所設置を巡る問題で、鈴木直道知事は喫煙所を設置せず、全面禁煙とする方向にかじを切った。議会側が最終的な結論を出さずに問題が長期化する中で、指導力を発揮しようと決断したとみられる。喫煙所の設置を決めていた最大会派の自民党・道民会議(53人)は断念せざるをえない状況だが、決着を急いだ知事に反発する声も上がりそうだ。
「今の状況は好ましくないですよね」。村田憲俊議長と都内で会談した知事はこう切り出した。関係者によると、知事と村田議長は、議会として早期に方向性を打ち出す必要性を確認。その上で、知事は「税金で喫煙所を造るのは無理です」と設置の断念を迫った。
知事は、これまで表面上は喫煙所問題に距離を置いてきたが、周辺には「道民の声を受けて、ゼロベースで考えるべきだ」と主張。「ボールがある議会側が、決めきれない」と不満を示していた。
問題が長期化する中、日本禁煙学会道支部長による住民監査請求や、自民党の有力支援団体である道医師会の長瀬清会長が記者会見で反対を表明する事態に発展。北海道新聞社の世論調査で喫煙所の設置に反対する人が85%に達した。知事は自らリーダーシップを発揮し、問題解決を急いだとみられる。
村田議長は、まちづくり団体の公開質問状に対し、「関係法令を順守し適切な受動喫煙対策を進める」と回答し、態度を明確にしてこなかった。今後は自民会派や、屋外を含めた敷地内の完全禁煙を求める他会派との調整が求められる。
自民会派は庁舎内への喫煙所設置の決定の再考を迫られるが、一部道議は喫煙所を強く求めており、知事への反発も予想される。
一方、日本たばこ産業(JT)北海道支社は、村田議長に対し、新庁舎への喫煙所の寄贈を打診。喫煙所の推進派の議員は「税金を投入する必要がなくなる」と訴えるが、寄贈を受けた場合でも設置に伴う工事などで道側に負担が生じる可能性がある。「JTと直接打ち合わせをしたことはない。どういう提案か分からない」(自民会派幹部)との声も出ている。