2019/10/04 05:00 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/351221?rct=c_editorial
道議会の最大会派である自民党・道民会議が、来年1月に完成予定の新しい議会庁舎の控室に喫煙所を設置する流れが強まった。
公共施設の禁煙化が進む中、議員は吸いたいから吸うという態度は、身勝手な「特権意識」の表れにほかならない。
しかも、設備は日本たばこ産業(JT)が寄贈し、設置費用も負担するという。税金では造らないと言いたいのだろう。だが、これはあからさまな利益供与と見られても仕方あるまい。
関連企業の支援を受けてまで公共空間で喫煙したいというのでは、厚顔無恥のそしりを免れない。
北海道新聞が7月に行った世論調査では、新庁舎内への喫煙所設置に反対する意見が85%に上った。自民党を支持する北海道医師会なども反発している。
道民の代表であるはずの道議が民意に背を向けるのだろうか。有権者が厳しい視線を向けていることを忘れてはならない。
他会派は喫煙所設置を求めておらず、鈴木直道知事も「税金で造るのは難しい」と通告していた。
それにもかかわらず、自民会派だけで設置を強行できるのはJTの後押しがあるからだ。
初期費用はJT持ちでも、その後の電気代や修理代などの維持管理費は公費からの支出が避けられない。
JTは結果的に完全禁煙の阻止に加担することで、企業イメージを損なうリスクを負ったと認識すべきだ。
6割が設置に賛成したとする所属議員へのアンケートは無記名で本人確認が難しく、会派内からも「1人で複数枚の紙を出せる状況だった」などと信頼性を疑問視する声が上がっている。
アンケートの結果を設置の論拠にするのは無理があろう。
設置へ進む前に、賛成の議員は名乗り出て責任の所在を明らかにする必要がある。
そもそも、道議会は議決機関であり、改正健康増進法が禁煙を義務づけた行政機関に当たらないとする説明が詭弁(きべん)に近い。
道議会も一般の傍聴者や道職員が訪れる公共施設である。法律を都合良く解釈して受動喫煙対策を怠るのは無責任だ。
北海道は肺がん死亡率が全国一高い。道議こそ率先してたばこの害を防ぐ対策を講じる責務がある。そのことを自覚してほしい。
全会派で喫煙所設置の是非を再度話し合い、議員の総意として完全禁煙を実現すべきだ。