自民、世論より派内融和 道議会新庁舎に喫煙所 知事選での対立再燃 執行部が収束を優先

2019/10/05 05:00 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/351632?fbclid=IwAR06sFMkOcohZODHCJOdPC1Yfo2e0n6xIq5NKi9Vz29bgOF9gQegjoL4fcM

 

 道議会の自民党・道民会議が4日、道民の強い反発を無視する形で道議会新庁舎への喫煙所設置を決めた。喫煙所設置の是非を巡り、春の知事選の候補擁立時から残る会派内のあつれきが再びもち上がり、執行部が収束を優先させた。道議会庁舎という道民の共有物のあり方やたばこの害への意識ではなく、会派内の事情を優先させた結論に対し、他会派の反発は必至で、今後の曲折も予想される。

 「自民党が一つにまとまらなければならない。そのために決断した」。議員総会後、記者団にそう語った佐々木俊雄議員会長の発言は、会派内の“亀裂”が深刻なことを物語っていた。ベテラン議員は「今回できた傷は深い」と認める。

 喫煙所問題で改めて浮き彫りになったのが、今春の知事選での「しこり」だ。

 設置賛成派は、自民党の候補者選びで鈴木直道知事の擁立を主導した吉川貴盛道連会長に反発した道議が中心。9月中旬に会合を開くなどして、喫煙所設置に税金を使わないよう求めた知事を「喫煙する権利はどうなるのか」と批判。「道民意見が正しいわけではない」「ここで譲ると、何でもマスコミの論調通りになってしまう」などと主張し、中間派を引き込んだ。

 設置に反対したのは、知事擁立の後ろ盾となった遠藤連・元議長や吉川氏の長男である会派の吉川隆雅幹事長ら。「遠藤氏が賛同者を集めに動けば動くほど、知事選のしこりが目立った」(中堅議員)。幹事長は全体の調整役を務める必要があり、表だった動きはできなかった。

 所属議員のアンケートで賛成派は全体の6割の31人。北海道新聞が7月に行った世論調査では、新庁舎内への喫煙所に反対する意見が85%に上り、会派内の論理に縛られる自民会派と道民との意識の乖離(かいり)は明白となった。

 春に道議選を終えたばかりで「どうせ3年半後の選挙は誰も覚えていない」(賛成派の道議)と開き直る声さえあった。

 道議会の各会派は8年前に将来的な禁煙を目指し、希望する会派の控室に喫煙所を設置する―と取り決めたが、新庁舎での扱いは定まっていない。

 自民以外の会派では、民主・道民連合は控室には喫煙所を設けない方針。北海道結志会、公明党、共産党の3会派は敷地内全面禁煙を訴える。民主会派に所属する高橋亨副議長は「喫煙所の設置は自民会派だけの問題ではない。道議会としての姿勢が問われ、道民の思いに沿った形で問題を整理しなければいけない」と主張。会派間での調整が必要になりそうだ。(竹中達哉)

■実質「議員専用」に 自民控室内に設置へ

 新しい道議会庁舎は来年1月に工事が終わり、6月に利用を始める予定。地上6階、地下1階。道議の会派控室は3、4階にある。自民党・道民会議の控室は4階で、詳細なレイアウトは明らかとなっていないが、その一角に喫煙所ができる公算が大きい。

 一方で傍聴者用の喫煙所を整備する予定はない。傍聴者は1階の玄関から入り、エレベーターや階段で6階の傍聴席に移動するため、通常は控室がある3、4階に立ち入ることはない。このため、自民会派が設置を決めた喫煙所は、実質的に「議員専用」となる。

 現在の道議会庁舎には自民会派と民主・道民連合の会派控室に加え、地下1階に傍聴者用の計3カ所の喫煙所がある。

 

北海道議会新庁舎の喫煙室設置問題の行方

2019年10月6日 19:31 財経新聞 https://www.zaikei.co.jp/article/20191006/534071.html


複数のメディアが「肩身の狭い」愛煙家にとっては、先行きを是非にも見守りたい記事を配信した。要約すると、こんな内容である。

★来年1月に完成予定(6月から使用)の北海道議会新設庁舎の議員控室に、最大派閥の自民会派が予定にはなかった「喫煙室」を設置する目的で、無派閥議員53名を対象に賛否を問う無記名アンケートを実施した。現庁舎には3カ所の喫煙場所が設けられている。

★結果は6割の無派閥議員から「賛同」の答えを得たことから、自民会派は道議会の閉会までに「設置」の採決を行う方針を固めた。

★他会派や医師や市民団体からは「時代錯誤も甚だしい」とする批判の声が上がっている。

 周知の通り7月1日に「改正健康増進法」の一部が施行された。受動喫煙防止の目的で、学校・病院・行政機関の敷地内が原則「禁煙」となった。

 法制定の背景のひとつにはIOC(国際オリンピック委員会)が目指す、「たばこのないオリンピック」実現目標があった。それに呼応する形で法改正がなされ、来年の東京五輪・パラリンピックに向けて一部が施行となった。(2030年の冬季オリンピックの誘致を目指している)北海道(庁)は、施設内での全面禁煙に既に踏み切っている。だが道議会は行政機関でないことから、喫煙室を敷地内に設けることは法律的には可能。

 さてどうなるかだが、報道の中で気になったのは★「自民会派は設営に当たっては、日本たばこ産業(JT)の寄贈を検討している」と伝えられた点だった。

 JTに報道に対する捉え方・反応を問い合わせコーナーから質してみた。窓口から私のパソコンにこんな内容の答えが届いた。

 「弊社では、たばこを吸われる方にとっても、吸われない方にとっても、様々な選択肢が揃っていること、そしてそれらを自由に選べる環境であることがより良い分煙社会であると考えている。また、施設管理者の方々が、たばこを吸われる方、吸われない方双方に配慮し、施設の利用目的や利用実態、利用される方々のニーズに応じて、適切な喫煙場所の設置・制限等を進めることが望ましいと考えている。

 そのため、施設管理者の方から分煙に関するご相談をいただいた場合には、分煙に関する情報の説明や、屋内の換気や空調等に関するコンサルティング等を無償で行っている。また、法令や条例に遵守した上で、これまで培ってきたノウハウを生かし、自治体の方々や飲食店等の施設管理者の方々と協働で、喫煙環境整備に積極的に取り組んできた。

 北海道議会庁舎の喫煙所の設置についても、道議会の検討の結果、喫煙所を設置することになった際には、適切な分煙環境整備の一環として、協働の申し出をしたところだ」

 寄贈の2文字は全く見受けられない。「協働」とある。協働とは「2つ以上の主体が同じ目的に向かい、協力しながら進んでいく」と認識する。また寄贈を三省堂大辞林は「学校や病院など公共性の高いところに品物を贈ること」と記されている。全くの別用語。一度、協働の対象になるたばこが吸える飲食店の施設管理者(オーナー)に、JTとの協働の実態を詳しく聞いてみたい。