2019/10/31 10:16 更新 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/359935?rct=n_major
鈴木直道知事が、来年6月までに道庁本庁舎の敷地内を完全禁煙とし、道職員向け喫煙所を設置しない方向で検討するよう庁内に指示を出したことが分かった。行政機関の敷地内を原則禁煙とする改正健康増進法の趣旨を重視した。道議会では自民党・道民会議が道議会新庁舎への喫煙所設置を決めているが、道の検討の行方が道議会の喫煙所問題に影響を与える可能性がある。
道職員向け喫煙所は建設中の道議会新庁舎駐車場予定地にあり、来年6月の新庁舎利用開始前に撤去されることが既に決まっており、その後の道の対応が注目されていた。本庁舎屋上に設置する案も浮上したが、道が年度内に制定を目指す受動喫煙防止条例骨子案が幼稚園、小中高校は敷地内完全禁煙とする方針を示していることもあり、知事は職員向け喫煙所も廃止するべきだと判断した。
現在約900人いるとされる喫煙所利用の道職員が周辺施設の喫煙所に出向いて迷惑をかけかねず、職場を離れる時間も長くなる懸念もある。知事は敷地内完全禁煙とした場合の課題の洗い出しも指示。屋上の設置を期限付きで容認している職員労組とも協議した上で最終決定する。
敷地内完全禁煙が実現すると、道庁本庁舎敷地内では道議会の自民会派だけに喫煙所が残ることになる。知事は自民会派が道議会新庁舎への設置を決める前に「税金を使うことはできない」とけん制した経緯がある。道議会の公明党は完全禁煙を主張し、全会派による話し合いを自民側に求めている。
2019/10/25 05:00 北海道新聞社説 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/357865?rct=c_editorial
道が本年度中の制定を目指す受動喫煙防止条例の骨子案に、医療関係者などから「甘すぎる」との批判が上がっている。
国の改正健康増進法を踏襲した内容で、独自の規制上乗せや罰則がないためだ。
来夏の東京五輪・パラリンピックに合わせ、対策を国際水準まで高めることが狙いだったはずの改正法は、屋内禁煙を徹底してきた近年の五輪開催国とはほど遠い規制にとどまっている。
札幌市と道は冬季五輪の誘致を目指している。しかも、東京五輪のマラソン、競歩が札幌で開かれる方向となった。
それにもかかわらず、道が国の規制を追認するだけの条例を作るのでは、五輪開催地としてふさわしくない。全国でも喫煙率が高い道内こそ、より厳しい規制が求められる。
骨子案は保育所や幼稚園、小中高校などは敷地内を完全禁煙とし、20歳未満の人がいる場所では喫煙しないことを盛り込んだ。
改正法より踏み込んだのはこれぐらいで、兵庫県や神奈川県の条例で設けている罰則規定はない。
道が開いた地域説明会では「単に法律に準じた内容では不満」といった異論が相次いだ。こうした声を踏まえ、実効性の高い条例案を練り上げてほしい。
改正法は東京都内の半数を超える飲食店で喫煙可能だが、同時に施行された都の条例は飲食店の8割超が規制対象になった。
東京五輪までの屋内完全禁煙の法制化を求めている世界保健機関の要請を受け、改正法を大幅に上回る規制を設けた。
道の条例でも、国の規制の穴をできるだけふさぐような対策を検討すべきだ。
公共施設の禁煙化が進む中、道庁内では職員向けの喫煙所を道庁本庁舎屋上に新たに設置する案が浮上している。
道議会も最大会派の自民党・道民会議が新庁舎の控室に、日本たばこ産業からの寄贈を受けて喫煙所を設置すると決めた。
手ぬるい対応が際立つ。条例案の策定や審議の過程で内容が骨抜きになる懸念が拭えない。
道と道議会はまず、自らの姿勢を正してから、条例制定に臨まなければならない。
鈴木直道知事も、自民党会派に「喫煙所は税金では造れない」と言いっ放しで終わるのではなく、道内全体でたばこの害をどう防ぐかを考え、道庁と道議会庁舎の完全禁煙を実現してもらいたい。
2019/08/11 05:05 北海道新聞社説 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/334062?rct=c_editorial
道議会の旧態依然の体質はこの春の改選後も変わらず、悪弊を断ち切る覚悟がうかがえない。
公開された2018年度の政務活動費(政活費)の収支報告書は、道議同士や道職員との飲食費など、市民感覚では疑問符の付く支出が相変わらず散見される。
全国の地方議会で進む領収書のインターネット公開にも後ろ向きで、対応の遅れが目立つ。
見直したはずの答弁調整は、議員と理事者が議場で原稿を読み合う光景に変化がない。
新しい議会庁舎の喫煙所設置問題も、喫煙派の一部議員が受動喫煙防止の流れに逆行する動きを見せ、決着できずにいる。
自分たちのえりを正すことができない議員に、道政の諸課題を解決できようか。
このままでは道民に見放される。道議には、有権者の負託に応える良識的な行動が求められる。
政活費は道議が「道政に必要な活動に使う」と主張すれば飲食や日用品への支出も認められ、厳正に運用されているとは言い難い。
飲食への支出は、道内の地方議会の大半が認めていない。東京都議会は飲食を伴う会合への支出を自粛し、18年度の飲食費が16年度の約1%まで激減した。
不透明な浪費を防ぐため、使途を厳格化する必要がある。使い切ろうとして不適切な支出につながる恐れがある事前支給を、事後精算に改めてはどうか。
領収書のネット公開は都道府県、政令指定都市、中核市の議会の約半数が実施している。道議会に根強い「費用対効果が低い」との反対論は通用しない。やる気一つで、すぐにできる改革だ。
質疑応答を事前にすり合わせる答弁調整は、先の定例道議会から意見交換にとどめることにした。
しかし、意見交換で入念に答弁内容をすり合わせ、道側が原稿を用意するため、これまでと変わらぬ台本通りの審議が続く。
緊張感のない質疑を繰り返しても、有権者の関心は引きつけられない。答弁調整は全面的に廃止するのが筋である。
喫煙所設置問題は、最大会派の自民党・道民会議が意見をまとめられず、ずるずると結論を9月まで先送りした。
他会派は喫煙所設置を求めていない。公共施設の禁煙化が進む中、自民党会派だけが「議員が吸いたいから」という理由で喫煙を続けるのは身勝手と言うほかない。
不毛な論議を早く終わらせ、本来の活動に専念するべきだ。