社説:道庁完全禁煙へ 道議会も実施が当然だ

2019/12/29 05:00 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/379352?rct=c_editorial

 鈴木直道知事は道庁本庁舎の敷地内にある職員向けの喫煙所を来年5月末で廃止し、敷地内を完全禁煙にすると表明した。

 来夏の東京五輪のマラソン、競歩が札幌で開かれることになった。さらに札幌市と道は冬季五輪の招致を目指している。

 近年の五輪開催国が屋内禁煙を徹底してきたことを踏まえれば、当然の対応である。

 今後は、道庁本庁舎に隣接する道議会新庁舎を完全禁煙にできるかが焦点となる。

 会派控室に喫煙所を設置する方針の自民党・道民会議は決定を覆し、喫煙所を設置しない他会派と足並みをそろえるべきだ。

 知事も道内全体でたばこの害をどう防ぐかを考えた上で、道議会を説得する必要があろう。

 道職員でつくる全道庁労組も、敷地内の完全禁煙化を受け入れた。新たな喫煙所を設置できる場所が限られ、道民の反発などを考慮したとみられる。

 既に完全禁煙を実現している10都府県を対象に道が行った調査では、昼休みに多数の職員が近隣の喫煙所に集中するなどして苦情が寄せられていた。

 道は人の往来の多い場所での喫煙を控えるよう職員に呼びかけるほか、禁煙したい職員に禁煙外来のある医療機関を紹介するといった対策を検討している。

 道庁本庁舎の敷地は東京五輪のマラソンコースになる。禁煙対策を徹底できない汚点を世界に発信するような事態を避けるためにも、実効性のある対策を講じてもらいたい。

 札幌市は道庁に先駆けて敷地内を全面禁煙にしている。道内の他の自治体もならってほしい。

 道議会新庁舎は来年1月に完成予定で、自民党会派は日本たばこ産業からの寄贈を受けて喫煙所を設置すると決めている。

 全5会派のうち民主・道民連合は控室に喫煙所を設けない。北海道結志会と公明党、共産党は敷地内の完全禁煙化を求めている。自民党の突出ぶりは異様というほかない。

 来年2月開会予定の定例道議会は、道が年度内制定を目指す受動喫煙防止条例の審議を行う。

 条例案は保育所などの敷地内禁煙を義務化する独自の規制も設けた。とはいえ、東京都内の8割を超える飲食店が禁煙となった都の条例に比べ、手ぬるさも目立つ。

 全国でも喫煙率が高い道内で高水準の規制を実現するには、道議が率先して範を示すのが筋だ。